研究課題
MLR試験での利用を想定したモデル細胞のスクリーニングを引き続き実施した。免疫応答を示すT細胞モデルとして、TALL-とMOLT-4を選定した。これらの細胞株はマイトジェンによる活性化反応を安定して示すことが見出された。並行して、MLR試験における被験細胞モデルの評価を行った。従来法MLRにて、MRC-5と不死化MSCがPBMCの増殖を抑制することを確認した。複数のPBMCロットへの影響を検討した結果、不死化MSCが安定してPBMCの増殖を抑えることが分かり、MLRにおけるポジコンとして有用であることが見出された。続いて、MLR試験における培養法の改良として、細胞を分散させるポリマー試薬を添加した培地と低接着容器を用いて構築される3次元環境下での細胞培養を検討した。ポリマー試薬の添加濃度、培養細胞の密度などの条件検討を実施した。さらに、MLR試験をイメージング技術によって定量的に評価する方法を検討した。TALL-1とMOLT-4それぞれに、増殖マーカーとして知られる細胞周期関連遺伝子のプロモーターとGFP遺伝子のノックインを施し、遺伝子改変細胞株を複数樹立した。さらに、遺伝子改変細胞株の特性解析を進め、ノックイン株において、細胞増殖・分裂に伴い、蛍光タンパク質が発現することを確認した。また、これら遺伝子改変細胞株を用い、シングルセルレベルで細胞を撮像するための培養容器の検討、撮像方法の検討、画像解析の検討も進めた。
3: やや遅れている
概ね予定していたことは実施できたが、遺伝子改変細胞株(T細胞モデル)の樹立と特性解析にかなり時間を要してしまい、従来法を含むMLRにおける有用性評価を実施することができなかった。また、TALL-1とMOLT-4は、マイトジェンによる活性化反応を示す一方で、増殖亢進反応はごく一過性であることが明らかとなっており、従来法MLRで用いているPBMCとの同等性が気になるところである。新規バイオアッセイ法をある程度のところまで確立しておきたかったが、まだ各要素の改良だけに留まり、それらを融合させた場合の条件検討を早く進めなければならない。
令和5年度は、従来MLR法に替わる新規MLR法を確立し、有用性/妥当性の検証を実施する。具体的には、培養系として、簡便な3次元培養技術を取り入れた共培養法の条件を確立する。さらに、解析系として、細胞数や各細胞の特徴量を画像解析によって効率的に評価する方法を確立する。これらを融合させた新規バイオアッセイについて、モデル細胞株、複数のMSCロットを用い評価/検証を進める予定である。
概ね予定通りの支出ができていたが、コロナ渦の影響により、一部物品の納期の目処が立たないものがあり、年度内納入不可のものについては購入を断念せざるを得ず、次年度に改めて注文することにした。その結果として次年度使用額が生じる形となった。これらは全て次年度の物品費として利用する予定である。
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Regenerative Therapy
巻: 21 ページ: 540-546
10.1016/j.reth.2022.10.009