研究課題/領域番号 |
21K12774
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中川 一人 日本大学, 生産工学部, 講師 (90523986)
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研究分担者 |
伊藤 玲子 日本大学, 医学部, 兼任講師 (10599351)
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
肥田 不二夫 日本大学, 芸術学部, 研究員 (90256909)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 吸入療法 / 加圧式定量噴霧式吸入器 / 気管支喘息 / 慢性閉塞性肺疾患 / 微差圧センサ / マウスピース |
研究実績の概要 |
吸入治療の効果を高めることを目的とし、気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の吸入療法に利用されるpMDI(加圧式定量噴霧式吸入器に取り付けが可能なセンサーデバイスおよびこれを応用した自動噴霧システムの開発を進めた。過去の研究よりも被験者数を増やしセンサーデバイスを用いた吸入時の吸入速度・吸入量測定を行った結果、吸入量・吸入速度とも性差・年齢の影響は少なく個人差が大きいことが明らかとなった。また、本研究で開発した自動噴霧システムを使用した結果、一定の被験者からは噴霧タイミング(吸入開始から0.5s)は適切であるとの回答を得たが、自動噴霧に不快感を示す被験者も見られた。特に吸入速度が遅い被験者は噴射タイミングを早いと感じ、吸入速度が速い被験者は遅く感じるとの回答を多く得た。このことから、吸入速度を基とし使用者個人に合わせた噴霧タイミングが必要であることが明らかとなった。また、pMDI使用時に咥えた角度をはじめとした被験者の所作および姿勢について調査した結果、咥える角度・長さには個人差が大きく、これらを適正な位置に指導することで吸入量の改善が見られた。そこで、自動噴霧デバイスの効果を高めることを目的としたマウスピースの開発および口腔内撮影および舌の位置・咽頭後壁の面積を測定によるマウスピースの評価を行った結果、マウスピースを使用することで適切な角度で安定して咥えることができるようになり、口腔内の舌位置も気道を妨げない位置にすることができた。また、吸入量の増加にも繋がったことから、効果的な吸入状況を確保するためには自動噴霧のタイミングの設定とともにマウスピースの形状を含めた自動噴霧デバイスの形状についても検討する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に行った被験者数は28名であり、吸入速度・吸入量の測定および開発した自動噴霧システムの評価については十分な結果を得られた。また、噴霧タイミングを従来の0.5s刻みから0.2sと詳細に設定できるよう、センサの応答性・使用するモータの見直しを含めたシステムのアップグレードを行い、より使用者に合わせた条件設定が可能となった。 マウスピースを含めたデバイスの形状についても検討し、使用者が正しい位置で使用することで吸入量の改善にも寄与した。また、正しい位置の評価法として、pMDIを咥えた際の口腔内画像および画像より得られる舌位置および咽頭後壁の面積測定が有効であることも明らかとなった。 しかしながら、2021年度は新型コロナウイルスの影響でpMDIを使用している患者の接触や被験者としての協力を得ることができなかった。これにより被験者はすべて健常者であったため、システムの操作性・正確性などの評価にとどまり、当初予定していた現在使用しているものとの比較、日常使用した際の問題点の抽出およびこれに伴うシステムのブラッシュアップを行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は健常者を被験者とした実験と並行して新型コロナウイルに若干の鎮静化が見られるため、可能な範囲ではあるが医学部を中心として患者を被験者とした実験を進める。なかでも、本デバイスを利用者として想定している高齢者を中心として実験を進める。高齢者を被験者とした結果測されることとして健常者に比べ吸入量が少ないため、噴霧した薬剤をすべて吸い込むことができない可能性が考えられる。このような場合はデバイスに噴霧した薬剤を一時的に滞留させるチャンバーを設けることで、複数回の呼吸で吸入することも視野に入れてシステム開発を進める。また、吸入速度がゆっくりであることも考えられるため、微差圧センサを中心として高感度のシステム開発を進める。 吸入データの利用として、以前開発した吸入治療用アプリケーションとの連携し、日常的に蓄積させるとともに、これらのデータの利用法の検討を進める。吸入データを利用法として、日常の吸入量の変化が症状の改善との関連性、また吸入状況を患者に提示し、理想的な吸入状況に近づけることを目的とする。また、これらのデータを新たな利用方法を提案するため、呼吸器医療従事者に対し聞き取り調査を進める
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルの影響で患者を被験者とした実験を行うことができなかったため、製作した自動噴霧デバイスの個数が当初の予定より少なくなった。また、患者への聞き取り調査によりデバイス形状を変更し、新しい自動噴霧デバイスを製作する予定であったが実現にいたらなかった。これらの実験は、新型コロナウイルスの鎮静化が見られるR4年度実施する。また、学会のオンライン化および現地に赴いての医療機関への聞き取り調査ができなかったため、旅費の利用が少なくなった。
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