脳卒中患者のリハビリテーションとしてトレッドミルによる歩行訓練を行うという手法は臨床的に広く用いられてきたが、現行の歩行訓練機器のほとんどは利用者下肢部に注目し、下肢部の反復強制運動を行うものである。一方、申請者らはこれまでに1自由度回転機構付きの胸部支持パッドを有する歩行車を試作し、歩行運動の特徴を定量的に評価することによって歩行アシストの有効性を確認した。本研究は利用者の上半身と下肢部のリズム的な連動を図るため、これまでの研究成果を活かして、回転型胸部支持パッドを有するトレッドミル型歩行訓練機の開発を行い、その効果を評価することを目的とする。R3年度には回転型支持パッドを有する歩行訓練機のハードウェアの設計製作を含むシステムの試作が行われ、R4年度には駆動型胸部支持パッドの設計製作と支持パッド制御と歩行計測系の構築が行われた。しかしながら、支持パッドを駆動するモータの制御パラメーターは従来の経験に基づいて設定されており、その影響は歩行者の下肢部運動にどのような影響を与えるかは明らかになっていない。この問題に着目し、R5年度にはまず歩行車の駆動型支持パッドの回転周期と回転速度を変えて測定実験が行われ、その関連性を評価した。解析の結果からモータの回転角度と回転速度と下肢部運動との間に強い関連性が確認された。次にトレッドミルの速度制御と駆動モータの回転制御という二つの要因に対して、異なる組み合わせを条件にして歩行計測が行われた。解析の結果から歩行者の上半身の回転周波数と下肢部の運動周波数が異なることが明らかになり、支持パッドの回転角度の大小にかかわらず、トレッドミルの速度が歩行者下肢部の運動に重要な影響を与えたことが確認された。本年度の研究内容に係わる研究発表については、国際学会1件(採択決定)、国内学会2件との発表実績があった。
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