研究課題/領域番号 |
21K12782
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
齊藤 玄敏 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70264091)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 尿道カテーテル / 光ファイバ / 深紫外線 / 殺菌 / 集光システム |
研究実績の概要 |
本研究では波長222nmの紫外線が波長254nmの紫外線と同程度の殺菌性能を有していることに着目し,光ファイバーを尿道カテーテルに組み込むことで,波長222nmの紫外線を尿道カテーテル管内,尿道壁と尿道カテーテルの境界に照射できる殺菌システムが実現に取り組むものである。本年度は光ファイバーへの効率的な集光の構造を考えること,そして集光した紫外線光の測定を目的として研究を遂行した。 本研究の集光システムは光源から放射した紫外線光を2枚の凸レンズで集光し,集光した光を光ファイバーに入射させることで深紫外光の伝送を行う。光源にはエキシマランプモジュールを使用し,凸レンズは合成石英ガラス製の球面平凸レンズ(焦点距離70mm)を使用した。光源の寸法が有限で,しかも4本の細いランプで構成されているため,点光源の理論が成り立たないので,光源と凸レンズの最適な配置は実測で求めた。結果として,凸レンズ2枚を凸面が向き合うように置き,凸レンズ間の距離を15mm,光源と凸レンズ間の距離を45mm,凸レンズと紫外線センサとの距離を40mmにしたとき,紫外線の強度は最大になることを確認した(1.95mW/cm^2)。これは深紫外光が光源から150mm伝播したときの強度(0.03mW/cm^2)の60倍以上に集光できていることになる。 さらに,最大強度が計測された集光配置で深紫外光を直径0.4mm,長さ1mの光ファイバーで伝送し,光ファイバーから出力された深紫外光の強度を測定した。結果として,深紫外光の伝送自体は目視でも確認できるが,伝送した紫外線の強度は0.01mW/cm^2よりも小さくなっていることが分かった。これは光ファイバーに紫外光を入射させる際の損失,そして光ファイバーを伝播したときの伝播損失が大きく現れていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は深紫外光の光源であるエキシマランプモジュールと凸レンズからなる集光構造の効率化を考え,その作成と紫外線強度の測定を通じて,「UVC(222nm)を使用する光ファイバー埋設型尿道留置カテーテル殺菌システム」のアイディアが実現可能であることを確かめることができた。これは大きな前進であったと言ってよい。ただし,光ファイバーに紫外光を入射させる際の損失,そして光ファイバーを伝播したときの伝播損失が大きく,伝送した深紫外線の強度は0.01mW/cm^2よりも小さくなっていることも分かった。このように問題はあるが,どこに対策を施せば良いのか,次年度取り組むべき課題が明確であるので,「おおむね順調に進展している。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,「紫外光の集光システムの改善」,特に集光した紫外光を光ファイバーに入射させる部分の改良に力を入れる。仮に,現在の集光強度でも集光した深紫外光の50%程度が伝送できれば,1~2分程度の照射で尿道内の尿路感染症の起因菌を99%以上殺菌できることになる。 また,前年度は半導体業界が機能しない状態にあったため断念せざるを得ない状況だったが,今年は回復の兆しが見え始めているので,波長220[nm]のLEDを使える可能性が高くなってきた。光源にこのLED利用も積極的に検討する。 加えて,尿路感染症の起因菌である大腸菌に対する殺菌実験を行い,本研究の殺菌システムが達成し得る性能を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているが,これはほぼゼロ着地と考えてよい範囲に入る。本研究は次年度も継続なので,これを無理に使用するよりも,次年度に回した方が有効に使用できると考えた。次年度は残金がゼロになるように,主として,実験材,ソフトウエア,旅費などで使い切る計画である。
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