初年度は、先行研究で構築したpython (深層学習フレームワークはpytorch) によるDNNシミュレータをベースに必要な電極数の位置、選定を行い、最適化を行った。種々のネットワーク構造と運動想起脳波 (MI) の識別率への寄与度を個別に検証した。国際的なベンチマークに用いられているBCI competition IV-2a on 4-class MIをDNNの学習データセットとして用い、分類に必要な電極数を15チャンネルまで削減しても分類精度を維持できることがわかった。 2年度目は、利用者の負担を軽減するため、同データセットを用いて事前学習した結果を用いてファインチューニングを行い、その訓練データ数と分類精度の最適化を実施した。ターゲットの被験者以外の8名の被験者のデータで事前に学習した結果をターゲットの被験者の学習に活用してファインチューニングを行う事 (Subject Transfer) で分類精度は平均で5.26%向上し、全体の平均で約80.0%となった。 最終年度は、本BMIの実用化を想定し、深層学習モデルのエッジコンピューティングへの実装を検討した。バッテリー駆動でCPU性能やメモリ容量に制約のあるエッジデバイスに実装するためには、計算コストの大幅な削減が必要であるため、低レイテンシと低消費電力を両立する高効率深層学習モデルを選定した。その結果、EEGNetで75.48%、EEG TCNetで76.23%、TCNet Fusionで78.27%の分類精度が得られた。4.5秒 (s) のMI入力データでの推論時間は、EEGNetが0.02058s、EEG TCNetが0.01445s、TCNet Fusionが0.01914sであった。2538個のパラメータを持つEEGNetと5680個のパラメータを持つEEG TCNetは、より短い推論時間を示した。
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