研究課題/領域番号 |
21K12792
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
篠原 寿広 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (20434863)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プローブの位置の良否判別 / 血管形状強調 / プローブの当て方の良否判別 / 超音波画像 / 赤外線画像 |
研究実績の概要 |
当該研究は、「誰でも容易に超音波画像装置を扱えるようにする」ことを目指し、計測対象位置にプローブを誘導する方法の確立、および超音波画像から脂肪厚と筋肉厚の計測方法の確立を目的とする。計測は、超音波画像装置の使用に慣れていない計測対象者自身で行うことを想定し、正しい位置にプローブを当て、取得した画像から脂肪厚、筋肉厚を計測できるようにする。 上記の目的を達成するため、当該年度では、プローブを正しい位置に当てる方法およびプローブが正しく当てられているかを判別する方法を検討した。 プローブを正しい位置に当てる方法として、プローブに取り付けた赤外線カメラによる位置合わせを行った。あらかじめプローブを正しい位置に当てたときに撮影した赤外線画像をテンプレートとして、テンプレートマッチングによる正しい位置の判別を行った。赤外線の元画像は血管形状が分かりにくく、そのままでは正しい位置の判別が難しいため、赤外線画像の血管形状を強調する方法を提案した。実際の前腕上部を対象に実験を行ったところ、高精度で正しい位置を判別できることを確認した。 また、プローブが正しく当てられているかの判別は、プローブが体表に密着していなかったり、ゼリーの塗布量が少なかったりして、正しく超音波画像が得らないことを防ぐために行う。プローブが正しく当てられているかの判定には、超音波画像に対して深層学習を用いた。すなわち、あらかじめ正しくプローブが当てられたときに撮影した超音波画像とそうでない超音波画像を深層学習により学習し、その学習結果をもとにプローブが正しく当てられているかを判別する。実際の上腕前部を対象として実験を行ったところ、高精度で正しく当てられているかを判別できることを確認した。また、判別に用いる1人あたりの超音波画像枚数およびその選定方法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究は、当初の計画よりもやや遅れている。その原因として、当初購入を予定していた超音波画像装置が、新型コロナウイルスの物流への影響により、製造・販売が遅れたこと、さらに、その装置の購入段階において、製造販売会社から本研究への協力が得られず、別会社の超音波画像装置を選定せざるを得なくなり、超音波画像装置の購入が大幅に遅れたことが挙げられる。しかしながら、当該研究に対して、非常に協力的な超音波画像装置の製造販売会社を見つけることができ、当初予算よりも安価に超音波画像装置を購入することができたと同時に、今後の超音波画像装置の改良にも協力が得られることになった。 また、当該研究では、提案手法の有効性の検証のため、本学に通う20代学生50名程度を被験者とすることを予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大により、大学への入構規制が実施され、予定していた実験を行うことができなかった。 そのため、研究計画からはやや遅れているものの、研究計画の一部の順番を変更し、研究実績の概要に記したとおり、プローブが正しく当てられているかの判別の検討を行ったため、当該研究の全体の進捗はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では、提案手法の有効性の検証のための実験を行うことができなかったため、はじめに実験環境が整いしだい、早々に実験を行う予定である。研究実績の概要に記したとおり、当初予定したよりも安価に超音波画像装置を購入することができたため、余剰金により実験規模を拡大し、より精度よくプローブを正しい位置に正しく当てられるように、プローブを正しい位置に当てる方法およびプローブが正しく当てられているかを判別する方法の改良を行う。 また、今後も研究計画にしたがい、次年度では、プローブを正しい位置に誘導する方法を検討する。正しい位置への誘導では、加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ一体型の9軸センサをプローブに取り付け、プローブの姿勢を推定し、どのようにプローブを動かせば良いかを直観的に分かりやすくパソコンのモニタ上に提示して誘導を行うが、すでに9軸センサは購入しており、プローブの姿勢推定の検討を始めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、下記の2つが挙げられる。まず、当該年度に、提案手法の有効性の検証のため、本学に通う20代学生50名程度を被験者として実験することを計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大により、大学への入構規制が実施され、計画していた実験を行うことができなかったため、確保していた被験者への謝礼金の支出が生じなかった。また、当初予定した超音波画像装置の製造販売会社から本研究への協力が得られなかったため、別の会社から超音波画像装置を購入したが、本研究への協力が得られ、当初予定していた価格よりも安価に購入することができた。 当該年度の未使用金は、当該年度に実施できなかった提案手法の有効性の検証のための実験の規模を拡大するために使用する。すなわち、被験者への謝礼金へ充当する計画である。
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