当該研究は「誰でも容易に超音波画像装置を扱えるようにする」ことを目指し、計測対象位置に超音波プローブ(以下、プローブと記す)を誘導する方法の確立、および皮下脂肪厚と筋肉厚の計測方法の確立を目的とする。皮下脂肪厚や筋肉厚の計測は、超音波画像装置の使用に不慣れな計測対象者自身で行うことを想定している。 上記の目的を達成するため、プローブを正しい位置に誘導する方法、プローブが正しく当てられているかを判別する方法、および皮下脂肪厚と筋肉厚を計測する方法を検討した。 プローブを正しい位置に誘導する方法として、プローブに取り付けた赤外線カメラにより、あらかじめプローブを正しい位置に当てたときに撮影した赤外線画像をもとに、テンプレートマッチングおよび赤外線画像の特徴量を用いた位置合わせによる誘導方法を提案した。すなわち、赤外線画像中の映る正しい位置を位置合わせにより検出し、その赤外線画像中に提示することによって、視覚的にわかりやすく誘導する。実際の前腕上部および大腿後部を対象に実験を行ったところ、正しい位置を提示できることを確認した。 プローブが正しく当てられているかの判定には、超音波画像に対して深層学習を用いる方法を提案した。すなわち、あらかじめ正しくプローブが当てられたときに撮影した超音波画像とそうでない超音波画像を深層学習により学習し、その学習結果をもとにプローブが正しく当てられているかを判別する。実際に上腕前部を対象として実験を行ったところ、高精度で正しく当てられているかを判別できることを確認した。 皮下脂肪厚と筋肉厚を計測する方法は、上腕前部を対象に検討した。はじめに深層学習により、超音波画像中の皮下脂肪および骨領域を判別し、その判別結果から皮下脂肪厚および筋肉厚を計測する方法を提案した。実際の超音波画像を用いた実験により、皮下脂肪厚と筋肉厚が精度よく計測できることを確認した。
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