研究課題/領域番号 |
21K12795
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
南保 英孝 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (30322118)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物生体電位 / 室内モニタリング / 異常検知 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
植物生体電位を用いた異常検知センサの開発のため、以下の内容を検討・実施した。まず、平常状態の生体電位を約6時間計測し、正常データを収集した。正常データより、電位振幅画像と3種類のスペクトル画像(位相、振幅、周波数)を合成したスペクトル合成画像を生成した。これらの画像とDiscoGANを用いて、振幅画像からスペクトル合成画像を生成するネットワークとスペクトル合成画像から振幅画像を生成するネットワークを学習し、2種類の画像を相互に変換可能とした。これにより、正常な振幅画像を入力すると一旦スペクトル合成画像に変換され、さらに類似した振幅画像を出力するネットワークが学習できる。異常な振幅画像が入力されても正常な振幅画像が出力され、差分により異常が検知できる。 学習したネットワークに、植物周辺で人が動いている時の生体電位画像を入力し、異常検知の精度を確認した。異常検知の精度は54%となり、十分な精度が得られなかった。また、正常状態の生体電位画像を入力した場合、正常と識別された割合が47%となった。現時点では、正常状態の波形画像の種類が多様で、6時間の正常データではな学習が行われていないことが原因の一つと考えている。また、画像のサイズを128x128ピクセルとしたため、スペクトル画像で多くの情報が欠落してしまったことも原因として考えられる。今後はデータの拡充と適切な画像サイズの検討により、精度の向上を図る。 なお、本成果は、2022/6に開催される電気学会E部門総合研究会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
植物生体電位を用いた異常検知センサの開発において、生成系の深層学習アルゴリズムを用いた異常検知手法の適用を検討した。 これまで、DiscoGANと呼ばれるアルゴリズムを用いて、収集した正常状態の植物生体電位から学習を行い、異常状態下で収集した植物生体電位の識別が可能かどうかについて、実験を行ってきた。今回は、異常状態とは植物の周辺で人が動いている状態を対象とした。DiscoGANは2つのドメイン間のデータの関係性を学習できることから、今回は植物生体電位の振幅波形画像とスペクトル画像の関係を学習させた。通常のGANは画像を生成するための入力の探索に時間がかかるが、DiscoGANでは波形画像からスペクトル画像を生成し、さらにスペクトル画像から波形画像を生成できるため、通常のGANよりも高速に動作する。 植物生体電位のデータを収集し、DiscoGANを用いて学習を行い、精度の検証を行った。異常検知の精度が57%となり十分な精度が得られなかった。精度が不十分となった原因として、データのバリエーションに対してデータ数が少ないことと、画像に変換する際の情報の欠落が考えられている。そのため、現在はデータを増やし、画像をより詳細にして改善を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの成果では、正常、異常の識別精度が非常に低いため、学習データの改善を図り、引き続きDiscoGANを用いた異常検知アルゴリズムの構築と精度の向上を図っていく予定である。学習データの改善には、植物生体電位データの追加測定と、データから生成する学習用画像の高解像度化を行う。また、現在は研究室内での測定を行っているが、環境を変えた場合にも同様の検証を行い、より汎用的な異常検知アルゴリズムの構築を目指す。また、学習アルゴリズムとしてDiscoGAN以外の他の生成系の深層学習アルゴリズムを利用することも検討する。現在は、異常検知でよく用いられる畳み込みオートエンコーダーを検討している。また、入力も画像にこだわらず、一次元の時系列電圧データを用いることも検討している。学習アルゴリズムとデータ形式の適切な組み合わせを検討していく。最終的には、識別精度の目標として、F値が0.8以上のアルゴリズム構築を目指す。 上記の目標を達成した後、実際の住環境での測定と構築した異常検知アルゴリズムの検証を行う予定である。
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