本研究は、申請者が提案する磁界励振型の送受信アンテナによる生体周辺通信を、生体周囲のみならず生体内部・深部へと拡張し、生体内外を通信エリアとする次世代の新しいボディエリア通信へと発展させるものである。生体内外に配置されるアンテナの構造に対するアンテナの特性や伝送特性を検討し、最終的には、電磁環境両立性(電磁波に対する生体安全性やイミュニティ評価など)の検討も行い、アンテナの設計手法、アンテナおよび生体を含めたシステム設計手法などを確立する。従来のボディエリア通信の伝送品質や伝送特性などの技術課題を根本的に解決する次世代の革新的ボディエリア通信技術へと発展させることをめざすものである。 2023年度は、実用的でよりスマートなアプリケーションを想定し、腕部や胴体部、さらには全身を対象として、表面生体に配置されたウェアラブル機器同士や、生体表面に配置されたウェアラブル機器と生体内部・深部に配置されたインプランタブル機器との通信特性を明確化した。その結果、提案する磁界励振型アンテナが、生体周囲、および生体内部につくる電磁界分布は、高誘電率である生体の影響を大きく受けずに、生体内外に効果的かつシームレスに通信エリアを形成できることを明らかにした。さらに、人体の電磁波防護の観点から、生体の電磁波エネルギー吸収率である局所Specific Absorption Rate (SAR) 値について、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によって定められた国際ガイドラインや総務省の定めるSAR制限値と照らし合わせて評価した。最後に、当初予定していたものに加えて、人体近傍に配置されるアンテナの、衣服やアクセサリーとの調和を考慮したアンテナの透明化の具現化と特性評価や、通信用アンテナを利用した生体情報センシングについても発展的に取り組み、その可能性に明らかにした。
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