研究課題/領域番号 |
21K12816
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
津田 尚明 和歌山工業高等専門学校, 知能機械工学科, 准教授 (40409793)
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研究分担者 |
多羅尾 進 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80300515)
藤原 康宣 一関工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40290689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 松葉杖歩行訓練器 / 受動的訓練 / AR錯視誘発 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
日常で負う怪我の多くは生活のふとした油断に起因する.治療中も同様で,特に日常生活への復帰が近づく治癒の終盤,いわゆる「見守り段階」での油断から二次的な事故に遭う恐れがある.特に,松葉杖歩行に不慣れな患者は,治癒までの松葉杖を使用する期間に起きる事故を防ぐことが求められる.しかし実際の生活空間では,障害物の飛び出しなど本人が注意していても避けられない受動的な外乱があり, それらにも備えておかないと実践的な訓練とはいえない. そこで本研究ではAR(拡張現実)技術を使ってヘッドマウントディスプレイ(HMD)に実際の景色に重ねて外乱を人工的に提示することでヒヤリ・ハット感覚を錯視誘発し,それに抗するバランス維持動作を促す新しい訓練を提案した. 言わば外乱対処型受動的訓練(外乱を受けても身体の感覚と筋骨格系の制御で対処できるようにする訓練)である. はじめに,AR(拡張現実)技術を使って外乱を人工的に提示するために,シースルー型のHMD(EPSON BT-350)にボールを模した球体を提示する機能を試作した.被験者がこれを使って障害物を回避する訓練を試みたところ,システムとしては想定通り機能した.しかし,この提示方法では,あたかも障害物が現れたと感じるわけではなく,すなわち,リアリティを欠くことが分かった.その理由は,現実の自然な景色に人工的な仮想障害物を重ねてAR提示したこと,また,その提示方法(画像パターン,タイミング,大きさや速度)を検討していなかったからである. この問題に対して,新たなヘッドマウントディスプレイ(Meta Quest 2)を導入した.これは,周囲の景色をHMDに内蔵されたカメラで撮影し,その画像に仮想障害物を提示するもので,先のように自然の景色と人工の障害物を無理矢理合成するわけではないため,その違和感が減少すると期待された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初試用したヘッドマウントディスプレイ(HMD)は,仮想的な障害物を被験者に提示するという目的で使用するには不適切であることが分かった.そこで,新たなHMDを導入した.この新しいHMDを導入する段階で,当初の想定以上の期間がかかった. 現在は,これを用いて仮想的な障害物をVR提示する機能を開発し,松葉杖歩行訓練に用いるための調整を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,現在調整中の,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)上で,実際の景色に重ねて外乱を人工的に提示するという仮想障害物のVR提示機能を完成する.この機能が機械的に動作することを確認した後には,実際に被験者に使用してもらってその感想を調査することで,仮想的な障害物の提示機能が被験者のヒヤリ・ハット感覚を錯視誘発出来るように機能を仕上げる.これを確認することが,松葉杖歩行中のバランス維持動作を促す新しい訓練として実用性があることの確認になる. あわせて,訓練の効果を定量的に検証できるような機能を追加する.具体的には,HMDに内蔵させた加速度・ジャイロスコープなどのセンサ群の計測結果を分析し,仮想的な障害物を提示したときおよび提示した直後に,歩行動作が変化しているかどうか調査する. その後は,被験者の脳波・心拍数(各計測器と赤外線カメラを新規購入)をモニタしながら実験を行い,訓練をより効果的・実用的にするための改良を続ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り,当初試用したヘッドマウントディスプレイ(HMD)は,仮想的な障害物を被験者に提示するという目的で使用するには不適切であることが分かった.そこで,新たなHMDを導入した. この新しいHMDを導入する段階で,当初の想定以上の期間がかかった.そのため,本来予定していた「HMDに内蔵される加速度・ジャイロスコープなどのセンサ群の統合」が完成しなかった.それに伴い,進捗に遅れが生じ,未使用額が生じた.
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