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2024 年度 実施状況報告書

「理論」と「現実」を架橋する生殖倫理の構築:存在と価値をめぐる分析哲学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K12820
研究機関一橋大学

研究代表者

吉沢 文武  一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (20769715)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード生殖倫理 / 人口倫理 / 反出生主義 / デイヴィド・ベネター / 非対称性 / 生命倫理
研究実績の概要

本研究の核となる問いは、誕生をめぐる「存在と価値」に関する倫理学の「理論的知見」は「現実の思考」と接続することが可能か、というものである。誕生をめぐる倫理学の学術的探究は、現実的影響が分かりやすいものだけではない。そこには、非同一性問題や反出生主義といった、不可避的に抽象的な話題が含まれる。そうした観点は、生殖に関する現実の判断に取り入れうるのかがさほど明らかではない。本研究は、生殖をめぐる抽象的思考と、現実の思考を橋渡しすることを目的に、研究課題を4つに分けている。(1)反出生主義をめぐる論争において誤解とすれ違いの理由はどこにあるのかを明確にする。(2)反出生主義をめぐる 議論の背景としての非同一性問題を整理し、それを扱うための生殖の倫理のための概念的道具立てを特定する。(3)生殖の倫理のための概念的道具立てに照らして、反出生主義をめぐる混乱の背景にある「道理ある誤解」を整理する。(4)生殖の倫理の理論を現実の思考に落とし込む。2024年度は、2023年度の研究を継続することで、本研究プロジェクト全体の成果となる英文論文草稿を複数まとめることができた。とくに、2024年度末にRes Publica誌に採択が決定した論文では、(3)および(4)の研究として、現代における反出生主義の基礎を成したデイヴィド・ベネターによる「非対称性論証」の根本的な問題点を特定することを目指した。具体的には、その論証において使用されている「最良の説明への推論」が、その推論が妥当であるためのルールを破っていることを明確にしている。この論点に関する批判は国際的にも例がなく、長く続いてきた当論証をめぐる議論状況に対して、大きな貢献になると考える。

現在までの達成度
現在までの達成度

2: おおむね順調に進展している

理由

4年目にあたる2024年度の計画としては、2022年度および2023年度に、国際一流誌への論文掲載等、高水準の学術成果に結びつくという見通しのもと、非同一性問題にとどまらず、より広い生殖・人口倫理の諸問題へと検討を広げる方向性をさらに押し進めていた。この見通し通り、2023年度には影響力のある国際誌であるBioethics誌に論文を掲載することができ、さらに2024年度には、複数の英語論文草稿をまとめ、国際一流誌に投稿した。ただし、2024年度内にこれらの論文が刊行されるには至らなかった。そのため、それらの論文草稿の刊行を中心目標として、2025年度の計画延長を行なった。これは成果の確実な発表のための延期であり、計画としては延長となったものの、全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。なお、2025年4月現在、Res Publica誌において1本の論文“The Wrong Inference to the Best Explanation for Anti-Natalism”がオンライン先行公開中である(正式掲載巻号は未定)。

今後の研究の推進方策

4年目にあたる2024年度の計画は、おおむね予想通りに進捗したと判断できる。2024年度中に、翌2025年度分の1年間の研究期間延長を行なった。研究計画全体の集大成となる論文が刊行され次第、速やかに本研究課題としては成果をまとめ、活動を完了させる予定である。そのうえで、主題の有機的連続性を有する研究課題として、2025年度から研究代表者としてすでに始動している科研費プロジェクト(基盤C)「生殖倫理における「非対称性」の解明:テーゼの多義性と人生全体の福利評価の観点から」に研究活動の主軸を完全に移し、注力していきたい。

次年度使用額が生じた理由

2021年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、とくに旅費が予定通りに使用できず、2022年度への次年度使用額が生じていた。2023年度および2024年度においても、2021年度の事情に起因する次年度使用額が引き続き生じていた。加えて、2024年度において、研究成果である論文刊行が年度をまたぐことが予想されたため、2025年度に研究期間を1年間延長し、論文掲載およびその情報発信等にかかる費用、研究計画全体を取りまとめるための費用を次年度使用額として確保した。

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公開日: 2025-12-26  

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