研究課題/領域番号 |
21K12831
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
保田 幸子 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (60774776)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 分配的正義 / 分配理念 / 十分主義 / 平等 / 質調整生存年 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「いつの平等か」を踏まえて、分配的正義論の観点から医療資源の公正な分配の基準を明らかにすることである。2021年度は、この目的に対して、理論的研究と応用的研究について、それぞれ課題を設定し、研究をすすめた。 まず、理論的研究として、分配的配慮の有力な原理の一つである十分主義の検討をおこなった。平等主義や優先主義は、格差の縮小を正しいとみなすが、十分主義は、各人の福利が閾値を上回ることを目指すので、不平等の縮小を目指すかについては見解に幅がある。十分主義のうち、閾値を超えた福利について関知しないものについては、批判が向けられている(無関心批判)。そこで、十分主義は、平等を目指すべきか、またその場合、十分主義は十分性それ自体に価値があるといえるのかを明らかにするために無関心批判への応答を検討した。成果となる論文は2022年10月に刊行予定である。 また、「いつの平等か」の応用的研究として、医療資源不足の際に、若年者を優先する方針は規範的に正当化できるのかを考察した。具体的には、帰結主義的説明として、質調整生存年(QALY)、契約主義的説明として思慮深いライフスパン説(prudential life-span account)をとりあげた。そして、これらにより、どのように若年者優先方針が説明されるか、またそれは説得的であるのかを検討した。これは論文としてまとめて投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、当初予定していた通り、理論的研究と応用的研究を並行して進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究成果を踏まえた上で、文研研究と学会・研究会での報告をし、論文の刊行を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の申請当初には、2021年度の後半には感染症にともなう行動制限は緩和されると見込んでいた。しかし、予定していた学会および研究会は、すべてオンラインへと変更となり、旅費として計上していた予算が一切不要となった。
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