研究課題/領域番号 |
21K12833
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
城田 純平 人間環境大学, 心理学部, 講師 (00816598)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイデガー / 哲学史 / 生の哲学 / 哲学的人間学 / ディルタイ / シェーラー |
研究実績の概要 |
今年度は、ハイデガーの思想を「生の哲学」として包括的に捉え直しつつ、そのようにして再解釈されたハイデガー哲学を現代の諸問題(環境をめぐる問題、生命をめぐる問題、芸術をめぐる問題)の解決のために応用していくことを基本的な課題として、本研究を遂行し、主に以下のような実績が得られた。第一に、2023年5月に名古屋哲学研究会にてシンポジウム「芸術と社会環境との関わりを問い直す」を開催し、研究代表者は本シンポジウムのコーディネーターを務めた。第二に、同年10月に、名古屋哲学研究会にて「ハイデガーと現代」のテーマのもとに例会を企画し、研究代表者は「ハイデガーはディープエコロジーの擁護者か?―ハイデガーとシェーラーとの対比を糸口として―」という題目のもと研究発表を行った。なお、これに付随して、Michael E. Zimmermanの論文Implications of Heidegger's thought for deep ecology(「ハイデガーの思索のディープエコロジーに対する示唆」)の全訳を行った。本研究発表においては、ハイデガーにおけるピュシスの問題について、これまでに研究代表者が、生概念の二重性(ビオスとゾーエー)という視点からハイデガー哲学を捉え直してきたことを基礎として、アルネ・ネスのディープ・エコロジー思想とハイデガー哲学との関連まで視野に収めつつ検討した。さらに、第三に、2023年3月発行の『哲学と現代』第38号に、「ハイデガーにおける「生の哲学」の帰趨―「転換点」としての『存在と時間』第77節の再検討―」を投稿し(61-75頁所収)、『存在と時間』において、とりわけヴィルヘルム・ディルタイへの言及が集中している箇所を再検討し、ディルタイ流のビオスとしての「生」をめぐる思索が『存在と時間』の基本的な構想にどのように影響しているのかを再検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和四年度までに本研究において当初目指されていた、ハイデガー哲学の生の哲学としての包括的解釈という課題は順調に進んでおり、その成果も口頭発表・論文投稿の形で示すことができている。ただし、本研究では、ドイツにおける在外研究による研究成果のドイツ語での公表も企図しており、この点に関しては、コロナ禍における渡航制限の影響により、夏に予定していた在外研究を予定通り進めることが困難となったため、遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては、ハイデガー哲学を生の哲学として包括的に解釈することを目指しており、とくにディルタイの生の哲学や、シェーラーの哲学的人間学からのハイデガーの影響という点を中心とする影響作用史的な観点から、『存在と時間』の時期までのハイデガー哲学を再検討し、さらにその後の彼の思索についても、二つの生概念(ビオスとゾーエー)を補助線とすることにより、いわゆるケーレ(転回)の問題も含めて、いっそうクリアな形で示すことに成功してきている。令和五年度は、それを踏まえて、本研究の研究成果をドイツにおける在外研究時に国外に示すことを目指している。さらに、本研究で得られた基本的な着想を、環境や生命をめぐる問題など、現代的な問題に応用する、という内容の単著を年度内に出版する予定である。前年度までに渉猟してきた内外の文献(とくにハイデガーと環境・生命の問題について論じられているもの)の内容を再度整理し、これまでの本研究の議論を現代的な諸問題に向けて応用していくための準備を整えていくことで、上記二点の目的を達成したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツへの洋行・在外研究の予定がコロナ禍による渡航制限により順延となったため、次年度使用額が生じた。次年度、これを上記の在外研究のために使用予定である。
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