研究課題/領域番号 |
21K12841
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
椛島 雅弘 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (90823807)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国兵学思想史 / 術数 / 敦煌文献 / 馬王堆漢墓帛書 / 星占 |
研究実績の概要 |
中国兵学思想史には、「人為的努力によって勝利を目指す兵学思想史」と「占術を頼りに勝利を目指す兵学思想史」という二つの潮流が存在する。後者は、思想史における大きな流れの一つであるのにも関わらず、研究史上においては、目を向けられることが少なかった。 従って報告者は、これまで占術に基づいた兵学思想が、「どのような理論に基づいて成立・発展したのか」という視点から研究を進めてきた。 本研究においては、占術の中でも特に星占に注目し、研究を進めてきた。本年度においては、古代から唐ごろまでの星に関する占術(五星占・宿星占・彗星占)について、基礎的な資料収集及び検討を進めることができた。各星占については、古代におけるイメージや、そのイメージに基づいた占術が後世においてもある程度忠実に継承されていることが明らかとなった。例えば、歳星(木星)=君主・農業、ケイ惑(火星)=軍事・死喪、鎮星(土星)=女主、太白(金星)=軍事、辰星(水星)=戦闘・刑罰・水害をそれぞれ象徴するとされ、それに対応する占術が古代から唐に至るまでの文献において存在している。 一方で、顕著な変化も確認された。それは、馬王堆漢墓帛書『五星占』における太白の象徴するものが、他の星と比べて多い点である。『五星占』においては、歳星=「失獄」、ケイ惑=「兵革」、辰星=「正四時」である一方、太白は「月行」「妖星」「彗星」「甲兵」「水旱」「死喪」のように、他の五星と比べて特別に多いことが確認された。(鎮星は欠損により不明)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響で、当初予定していた学術調査を実施することはできていないが、その他の研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
馬王堆漢墓帛書『五星占』において、なぜ太白の象徴するものが他の文献に比べて多いのか明らかにしたい。現時点での私見によれば、この現象は太白が他の五星より重要視されたことが原因である。今後は、この具体的な背景について、可能な限り明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で海外渡航が難しいため、その分を繰り越した。次年度にもし渡航の目処が立てば、渡航費として使用し、難しければ国内調査や物品費に充てる予定である。
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