研究課題/領域番号 |
21K12842
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川村 悠人 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (50739068)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | サンスクリット語 / パーニニ文法学 / 属格 / 関係論 |
研究実績の概要 |
本研究は、サンスクリット伝統文法学における属格語尾の意味論を包括的に考究し、その内実を明らかにしようとするものである。サンスクリット文法家たちによれば、属格語尾の主要な意味は「関係」である。問題はこの「関係」とは一体そもそも何なのか、「関係」にはどのような種類があり、そのうちどの「関係」が属格語尾の意味として認められるのか、ということにある。 2022年度は以下の作業を行った。まず、パーニニが属格語尾の用法を規定する規則1.1.49を中心に後代の文法学文献を渉猟し、属格語尾の本質に議論を丹念に追った。また、先行訳を批判的に検討しつつ、バルトリハリ『文章単語論』における「関係論詳解」の確認を完了した。同じく、先行訳を批判的に検討しつつ、バルトリハリ『文章単語論』における「能成者詳解」の「関係」部の確認を完了した。 最も大きな成果としては、上述した規則1.1.49を含め、パーニニ文典第1章第1節に対する訳注研究を『東京大学言語学論集』に公表できたことである。この箇所は、文法規則の解釈の前提となる術語規則や解釈規則が多く居並ぶ箇所であり、その正しい理解はパーニニ文法学の理解にとって大きな比重を占める。そのような箇所の要点をすべて網羅した本訳注研究は、今後の文法学研究にとって欠かすことのできない資料となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた作業および資料の作成が順当に進んでいることが理由である。加えて、二つの異なる出版社からパーニニ文法学およびインド言語哲学をめぐる書籍の出版を依頼されており、そこには本研究の成果も存分に盛り込む予定となっている。それら二つの書籍の準備を2022年度は大いに進めることができた点も理由に挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は次の研究活動を主になす予定である。まず、パーニニ文典の訳注事業を継続して、パーニニ文典第1章全体の訳注を完成させ、『東京大学言語学論集』に公表する。次に、シュタインケルナー教授が2022年に出版した最新の校訂本を利用して、仏教哲学者ダルマキールティの『関係の吟味』とそれに対するデーヴェーンドラブッディの注解を読解し、資料を作成する。これによって、文法学派内部の目だけではなく外の目から文法学派の「関係」概念を考えることが可能となる。上述した二つの書籍についても準備を進め、本研究の成果を積極的に取り込む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
894円の次年度使用額が生じている。これは、何か資料を購入したり旅費に使ったりするには少なすぎ、筆記用具といった研究用品を買うには多すぎるものとして余ったものである。次年度には、研究用のコピー用紙あるいはコピーカードを購入する予定である。
|