古代地中海文明を基盤とする欧米のみならず世界各地の文学作品で「自己犠牲」や「身代わり」は好まれる文学モチーフの一つであり、人身供犠を対象とする本研究の進展は、人類の宗教理解・文学理解に資するところが大きい。 幼児虐待が保護すべき乳幼児を生命の危機に晒すという点で人身供犠の中でも幼児供儀と、自爆テロが宗教的意図を達するために(自身を含む)人命を絶つ点で人身供犠全般と、それぞれ本研究は関わりを有している。もちろん、安易な関連付けや比較は慎重であるべきだが、人身供犠の特質を解明する本研究の進展はこれら現代の課題にとって示唆的である。
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