研究実績の概要 |
アナキズム思想と人類学の交差として、これまで十分に検討されてこなかった点として、人類学の著作を哲学・思想史の観点から厳密に読解し、精査して行く点にあった。それゆえ、過去二年間のほとんどを、著作や論文、テキストの収集とその厳密な読解につとめてきた。とりわけ、(1)人類学者であるデヴィッド・グレーバーのアナキズム思想の受容関係を中心に、どういった著作が彼によって読まれ、いかに哲学や思想が受容され、展開されていったのかという点に重点を置いてきた。また(2)J・C・スコットにおける「ゾミア」の民の概念を厳密に精査した上で、この概念を応用的に哲学・思想史的に検討できるか否かという点にも着目して研究をおこなってきた。さらにはこうした応用的な議論として、(3)アナキズム思想そのものの文化的な表象への適用として映画や文学作品の読解も試みてきた。 (1)としては、デヴィッド・グレーバーの翻訳を進め、次年度内には刊行を予定している。また、グレーバーの翻訳を数々手掛けてきた大阪公立大学の酒井隆史教授とグレーバーの著作に関するトークイベントで共に登壇し、グレーバーの思想を世に問うた(『価値論』(D・グレーバー著・以文社)刊行記念 酒井隆史氏(大阪府立大学教授)×森元斎氏(長崎大学准教授)ライブトーク『グレーバーとは誰か?』誠品生活日本橋、2023年3月8日)。またこの『価値論』の書評を西日本新聞で発表した(書評「デヴィッド・グレーバー『価値論』以文社」、2023年2月18日)。 (2)としては、森元斎「森崎民俗学序説 森崎和江における「水のゾミア」の思想」『現代思想』50(13),2022年10月, pp.230-242を発表した。 (3)としては、森元斎「after the requiem ジャン=リュック・ゴダールの脱構成」『ユリイカ』55(2),2022年12月, pp.542-551を発表した。
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