研究課題/領域番号 |
21K12858
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
崔 鵬偉 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (20875786)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 百鬼夜行 / 具注暦 / 忌夜行 / 大唐陰陽書 / 本地垂迹 |
研究実績の概要 |
本研究は、平安時代から室町時代までの文献資料(必要に応じて江戸時代の史料も扱う)に視野を広げ、百鬼夜行とそれに遭遇した人間がどのような対応をしたのか、また何故そのように行動したのかという、従来の研究とやや異なる視座から、百鬼夜行譚の思想的・文学的意味を考究するものである。主に、<1>百鬼夜行日の起源、<2>百鬼夜行譚に登場する陰陽師のイメージ、<3>本地垂迹説を唱える文献資料にみられる百鬼夜行の原型という三つの課題に取り組んでいる。 令和三年度は、<1>と<3>を中心に資料調査を行った。 まず<1>について、具注暦に「忌夜行」が記されるようになったきっかけを探る手がかりとして、宣明暦の暦注の依拠資料とされる『大唐陰陽書』を検討することにした。『大唐陰陽書』の諸本について、①京都大学人文科学研究所本(1冊、27丁、巻三十三のみ)、②東京大学史料編纂所所蔵島津家本(大永五年(1525)前後、窓月写、1冊、32丁、巻三十三のみ)、③国立天文台本(戦国の僧侶一柏所蔵本を近世で写したもの、1冊、50丁)、④国立公文書館(内閣文庫、旧和学講談所)本(近世、1冊、5丁)、⑤国立国会図書館所蔵小島本(宗尤写、1冊、35丁、巻三十二のみ)、⑥東北大学図書館蔵『長暦』(1冊、54丁)の調査を終えた。 また<3>について、本地垂迹説を唱える文献資料にみられる百鬼夜行譚のうち、『八幡宮巡拝記』第三十一話の類話として、新たにⅰ『江談抄』巻六第八話「隴山雲暗、李将軍之在家、潁水浪閑、蔡征虜之未仕 清慎公辞大将状 文時」、ⅱ『十訓抄』十ノ七「名句により病を免れる」、ⅲ『古今著聞集』第百十七話「鬼神、菅原文時の家を拝する事」という三つの事例を確認することができた。 さらに、『太平記』巻二十三「伊予国より霊剣注進の事」も百鬼夜行譚と看做すことができると判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料調査にかかる時間が予定より大幅に上回ってしまった。例えば、天理大学附属天理図書館吉田文庫本『大唐陰陽書』の調査は、コロナウイルス感染症の影響で、直接に所蔵機関への出かけ調査を控え、所蔵機関に資料の取り寄せを依頼したが、令和三年度内に資料を入手することができなかった。また、静嘉堂文庫本『大唐陰陽書』の調査は、所蔵機関建物の老朽化に伴う修理及び書庫内整理等により、閲覧・複写サービスが休止となったため、見送ることを余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
令和四年度には、引き続き、『大唐陰陽書』の天理図書館本・静嘉堂文庫本・六地蔵寺本の調査を行う。 また、研究発表や論文執筆によって研究成果を公に発信する。例えば、2022年11月12日~13日に行われる、第三回中日古典ワークショップ(早稲田大学日本古典籍研究所・北京大学中国語言文学系主催)において、「百鬼夜行日解釈の再検討―『拾芥抄』を手がかりに―」と題する口頭発表を行う予定である。これは16世紀以降の写本しか現存しない『大唐陰陽書』における「忌夜行日」の記載状況から、室町時代以降の百鬼夜行に対する認識の変容を考察するものである。
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