研究課題/領域番号 |
21K12867
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
上田 泰 (上田泰史) 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (90783077)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パリ国立音楽院 / 定期試験曲目 / ピアノ教育 / レパートリー |
研究実績の概要 |
本研究は、1842年から1889年にかけて、フランスのパリ国立音楽院ピアノ科の予科で行われた学期末試験の演奏曲目データを、現存する公的史料から可能な限り収集し、統一的な演奏曲目データベースを作成することを目的としている。ピアノ科の「予科」(準備クラス)とは、いっそう高度で専門的なピアノ教育を旨とする上級クラスに上がるための予備的な学習を行うクラスである。なお、予科は1850年度より形式的には廃止されるが、実際上は「鍵盤楽器学習科」がその機能を担い続けた。1878年度の学則により「予科」の名称が復活する。「予科」も「鍵盤楽器学習科」も本質的には同じ教育的役割を担っていたので、ここでは便宜上、それら双方を指して「予科」と称する。 予科の演奏曲目を知る上で調査の対象となる史料は、フランス国立古文書館所蔵の史料系列AJ37に含まれている。対象となる史料は大きく3種類に分かれる。1)学期末試験の折に作成される教育委員会議事録(以下「議事録」)、2)学期末に各クラスの担任が作成する生徒の学習進捗報告書(以下「教授報告」)、3)試験官が試験中に書き残したメモ。本研究では、これらの史料を相互参照しながら、年2回行われる学期末試験で演奏された曲目の一覧を完成させることを目指す。 2021年度のデータ入力実績は以下の通りである。議事録(1870-71年度から1884-85年度):史料上に見出された1454件の曲目データの入力が完了した。教授報告(1842-43年度から1884-85年度):史料上に見出された1646件の曲目データの入力が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、新型コロナウイルスの収束が見られず、国際的な移動には慎重にならざるを得なかった。そのため、現地調査は見合わせたものの、フランス国立古文書館の電子データ公開が進んだことを大きな理由として、2021年度はイレギュラーながら一定の進展を見ることができた。3年間のプロジェクト全体として見れば、およそ3分の1の史料を扱い、データを入力することができた。したがって、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、2021年度の入力ペースを維持するには、入力の拠り所となる史料の撮影が不可欠となる。とりわけ、「研究実績の概要」に挙げた「試験官が試験中に書き残したメモ」については、今後情況が許す限り、2022年夏期にフランスへ渡航し、仏国立古文書館所ピエルフィット分館にて資料収集を進める必要がある。だが、もし海外への渡航制限が厳しくなった場合、同古文書館に対象資料のデジタル化を委託する可能性を探るなど対策を講じる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、フランスにおけるコロナ新型ウイルスの収束がみられず、夏期の日仏間渡航を見合わせた。渡航費およびフランス滞在費等への支出ができなかったため、次年度使用額が生じた。2022年度は、状況の許す限りフランスに渡航するほか、アテネで行われる国際音楽学会でも、本課題の成果から得られた知見を生かた研究発表を行う予定である。次年度使用額は、主にこれらの海外渡航・滞在費に充てるつもりである。
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