研究課題
若手研究
本研究では、日本近世の主な書論・近現代の書道史における「和様」の語の解釈を比較することにより、その解釈の変遷を検討した。近世においては、和様の解釈・和様の書流に対する立場は多様であるものの、御家流の祖で和漢に通じていた尊円親王の真跡は評価される傾向があった。また、日本の書を一概に和様・唐様と区別すること自体が理に合わないとする論は、近世から存在していたことが窺えた。明治期においては、文献考証を能くした国学者達が、『異制庭訓往来』を典拠として和様の形成期を平安中期と捉える動向があった。
書道史
本研究によって、和様の書に関する文献学的調査が進み、和様の書に関する様式的研究を実証的におこなっていくことが可能となる。東アジアの書の歴史、ひいては書のグローバルヒストリーを構築していく上でも、他地域と比した日本の書の特徴という重要な課題を探る端緒となる。また、和様の語は美術諸分野において用いられると共に、和漢の関係性は日本文化史において欠くことのできない観点である。和様化の起点と特徴を分野横断的に検討していく点においても波及効果が期待される。