研究課題/領域番号 |
21K12876
|
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
上畑 史 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 機関研究員 (60827864)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | セルビア音楽 / 旧ユーゴスラヴィア音楽 / アコーディオン / シンセサイザー |
研究実績の概要 |
本研究は、バルカン半島・東欧に位置するセルビアで、同国の民俗音楽と結びついた「民俗調音楽」に欠かせない2つの鍵盤楽器アコーディオンとシンセサイザーおよび、両楽器と関連した音楽・文化を対象に、文化史的考察を行うものである。本研究では、①社会主義期のアコーディオン、②ポスト社会主義期のシンセサイザー、③両楽器の連続性という3点から、外来楽器である両楽器の需要実態を明らかにし、これらを統合することによって、文化史における「民族性」の形成・変容の過程を解明することを目的としている。 本研究課題の1年目となった今年度は、年度の後半にセルビアでの資料収集およびフィールドワークを予定していたが、新型ウィルス流行の第5波・第6波のために断念せざるを得なかった。このため、文献中心の調査に切り替え、本研究を進めることとした。 文献資料に関しては、日本国内からセルビアやその他の海外に多数発注して購入、取り寄せた。具体的には、アコーディオンに関する文献資料と、セルビア・旧ユーゴスライヴィア・バルカン半島における社会主義期の音楽や文化に関する文献資料を中心に収集した。また、これらの精読を進めたことにより、両楽器と関連する音楽・文化の歴史研究についてはある程度の進展があった。 また、上記の①と関連した成果として、セルビアを含むバルカン半島においてアコーディオンを必須の伴奏楽器とする民俗舞踊とその文化に関する事典項目を発表し、上記の②と関連した成果として、セルビアの民俗調ポピュラー音楽に関する論文を完成させた(2022年7月刊行予定)。 以上によって、本研究課題を可能な限り進展させるよう努めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の1年目となった今年度は、当初から年度後半での現地調査を計画していたが(前半は主に、大学での講義担当のため渡航できず)、新型ウィルス流行の第5波および6波のために、渡航を延期せざるを得なくなった。 本研究の調査方法としては、一次資料の収集・分析に加え、参与観察や生活史調査が肝要である。特に協力者を要する調査に関しては、調査協力者との信頼関係を前提として成り立つ上、ときに現地のコネクションを活用した直接的な依頼・紹介が必須となる。一連のこうした調査活動において現地に赴けないことが支障となった。 こうした状況から、今年度は文献中心の調査活動を行なって一定の成果があったものの、本課題の調査研究は上記の理由から、やや遅れ気味となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の新型ウィルス感染状況および調査対象地域の感染対応をみる限りでは、次年度からの渡航は可能となる見込みである。 今年度は文献調査に重点を置くことができたため、むしろ次年度は、セルビアでの資料収集やフィールドワークに一層注力することができると考えている。この状況を活かして現地での調査活動の効率化を高め、今年度断念した調査活動を補完することで、本研究課題の遅れを取り戻す。 仮に感染状況が再び悪化するなどし、引き続き渡航が困難となった場合は、今年度のように状況を窺いながら渡航のタイミングを待つことによって、結果的に調査研究の進捗が左右されてしまうことのないよう、可能な限り早い段階で調査方法の変更を決断し、日本国内でインターネットを最大限に活用することで、本課題の遂行に努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型ウィルス流行により渡航が困難となったため、旅費や現地での調査活動(資料購入や資料コピー代など)に関連して、次年度使用額が生じた。 この次年度使用額は、次年度可能となる見込みの渡航に際して必要となる。今年度の遅れを取り戻すべく、可能な限り現地での調査期間を確保し、旅費に加え、今年度遂行できなかった資料の収集・購入に充てる。
|