研究課題/領域番号 |
21K12879
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
岡坂 桜子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (60843985)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | タピスリー / ギュスターヴ・ジェフロワ / ゴブラン / 美術史 / 美術行政 / 美術批評 |
研究実績の概要 |
本研究では、フランスの国立ゴブラン製作所に関して、20世紀初頭に所長を務めたギュスターヴ・ジェフロワ主導による、タピスリー近代化への刷新運動の歴史的評価を検証することを主眼としている。本調査を進めるための具体的な手続きとして、二つの観点を設けている。すなわち第一に、ジェフロワ時代の製作所の運営方針やその間製作された作品群の歴史的評価を、主に一次史料の掘り起こしや実作品の考察に基づいて、ジェフロワ以前・以後の製作所の歴史の中で相対的に捉えること、第二に、フランスの公的芸術の生成を担う国家機関として役割にその活動が規定・制限される製作所の活動を、同時代の私営工房の活動や個人メセナの支援によるタピスリー制作活動と比較検討することである。 5カ年計画の初年度にあたる本年度は、研究の基盤となる資料収集とその整理・分析に注力した。収集にあたっては、予定していたフランス本国での現地調査がコロナ感染拡大による海外渡航の制限により実施不可となったため、日本から入手できる二次文献の収集が主となった。これらの二次文献は、上記、調査手続きの第二点目に関するもので、この整理・分析により、20世紀の欧米のタピスリー史とその研究動向を把握することができた。調査手続きの第一点目に関しては、現地調査による一次史料の収集が実施不可となった代わりに、これまでの調査を通じて収集したが整理・分析が未実施であった公文書について作業を行なった。 本年度は、上記の作業を論文等の具体的な成果物としてまとめることができなかった為、次年度の課題としたい。ただし、当該研究テーマに関連する派生的なトピックについて調査する機会があり、これに関しては、展覧会カタログ所収のエッセイとしてまとめる機会を得た(「マルタンの壁画装飾」『シダネルとマルタン展』(展覧会カタログ)SOMPO美術館ほか、2021年、pp. 122-125.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フランスの国立ゴブラン製作所について、20世紀初頭の活動の歴史的評価に関する本研究は、やや遅れている。本研究は、フランス本国での現地調査(公文書の収集、作品の実見調査)に負うところが大きく、コロナ感染拡大による調査が遂行できなかったのが、調査の遅れの大きな原因である。しかしながら他方で、現地調査が実施できない代わりに、日本国内から入手可能な二次文献および関連情報の収集に注力し、本研究が射程とするトピックに関する先行研究の研究状況を把握、新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、当初の研究方法や計画から大きな変更はなく、2年目も計画通りに進める。ただし、1年目に実施不可となった海外調査については、2年目以降に延期し、海外渡航が可能となった時点で、2年目の可能な限り早い段階で実施したいと考えている。なお、この海外渡航については、情勢の先行きが見えないため、3年目以降への持ち越しや、国内調査の比重高める等、様々な対応策を視野に入れて柔軟に対応していく。また、海外調査以外の調査に関しては当初の計画通りに、あるいは海外調査実施不可を見越して計画を前倒し、論文等の具体的な成果物に結びつくよう進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(21年度)に予定していたフランス本国での調査が、コロナによる海外渡航の制限により遂行不可となったため、旅費として確保していた資金が手付かずのまま残された。また、海外調査時に使用する備品類(資料撮影用のデジタルカメラ、撮影データ保管・整理・蓄積用のパソコン等)を購入するための資金も、同様の理由で今年度は使用しなかった。これらの資金は次年度に繰り越す。資金繰り越しにあたっては、研究計画も多少の変更をし、海外調査を2回実施、あるいは、本年度の旅費を国内調査に充てる等、柔軟に対応する。
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