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2021 年度 実施状況報告書

ルドルフ2世のプラハ宮廷における北方版画受容の版画制作への影響

研究課題

研究課題/領域番号 21K12883
研究機関神戸大学

研究代表者

川上 恵理  神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (10844813)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード版画 / 神聖ローマ帝国 / マニエリスム / 西洋美術史 / 北方ヨーロッパ / 複製版画
研究実績の概要

本年度は、版画の原版と刷りのうち、刷りの受容方法と機能の解明について研究を進めた。まず、絵画など他分野の芸術作品を版画化した複製版画には、しばしば原画からの変更点が見られるが、それが版画家および原画制作者のいかなる意図のもとに成り立ち、どういった機能をもつかを明らかにすることは本研究の課題のひとつである。今回は、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の宮廷芸術家ヨリス・ヘーフナーゲルがピーテル・ブリューゲル(父)の原画にモティーフを付け加えたであろう版画作品《プシュケーとメルクリウスのいる風景》(シモン・ヌウェラヌス版刻、16世紀後半)の作品解釈を進めた。それにより、ルドルフ2世が愛好したブリューゲル作品や印刷特権(プリヴィレギウム)との関わりから、ヘーフナーゲルが追加した図像の主題選択の意味を考察した。
さらに、その研究の結果、ルドルフ2世の時代の印刷特権の制度や、版画発行における影響力に関しても整理する必要を感じた。そこで、ウィーン国立文書館にあるルドルフ2世が版画家に対して発行した印刷特権の読解と考察を進めた。その成果は史料紹介としてまとめている。この研究によって、帝国は版画の制作・出版の中心地ではなかったものの、北方版画の発行に対して印刷特権の面で強い影響力をもち、ひとつの中心地として機能していた様相を具体的に検証することができた。プラハ宮廷の版画制作や果たした役割については、その重要性に反して十分に研究が進んでいない分野であるため、こうした背景も明らかにしていくことは意義がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

原画からの変更点がある複製版画の研究を進めている点は、計画どおりの順調な進捗だと言える。その研究との関連から同時代テクストのなかでも印刷特権の読解・検討に踏み込んだ点は当初予定しておらず、当初計画部分については若干の遅れも生じている。また、ヨーロッパでの一次資料の調査を行えない点も研究の遅れに結びついている。しかし、印刷特権の調査はルドルフ2世のプラハ宮廷の版画を考察するうえで基盤となる研究であり、益する部分も大きいため、軽微な遅れがありつつも、おおむね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

当初の基本方針を保ちながら、引き続き資料の収集と作品分析を続ける。まず、本年度行った研究から引き続いて、原画からの変更点のある複製版画の更なる事例の調査・作品研究を進める。複製版画における原画からの変更点の理由を推測するにはより多くの事例があることが望ましいためである。さらに、2022年度は、原画と原版、刷りの関係や宮廷での受容について考察するために、クンストカマーの目録の諸版の調査を進める。

次年度使用額が生じた理由

渡航の制限から本年度も在外調査の機会がもてず、また国内出張も時期によっては規制されたため、次年度使用額が生じている。研究対象の作品の実見や一次資料を有するウィーン国立文書館等の訪問ができない状況であるが、計画の2年目にあたる2022年度か最終年度までには渡航が可能になるという前提でもって、オンラインのデータベースや画像をもちいながら、準備研究を積み重ねる計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 史料翻訳 神聖ローマ皇帝ルドルフ2世による版画家への特権付与について2022

    • 著者名/発表者名
      川上恵理
    • 雑誌名

      美術史論集

      巻: 22 ページ: (1)-(13)

  • [学会発表] ルドルフ2世の宮廷におけるプシュケーとメルクリウス―《プシュケーとメルクリウスのいる風景》を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      川上恵理
    • 学会等名
      エンブレム研究会第28回研究会

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公開日: 2022-12-28  

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