研究課題/領域番号 |
21K12884
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
向井 晃子 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (70848465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 井上有一 / 前衛書 / 周縁 / 美術制度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1957年にサンパウロ・ビエンナーレに出品し、現在も国内外で評価が高く一般にも人気のある前衛書家井上有一について、資料所有者から閲覧許可を得られた自筆日記と記録を読み解くことで、明治期になされた「美術」の分類を問い直すような革新的な試みを行ったものの周縁化された立場にあった井上の革新的な制作活動と受容、彼が支えられた環境を明らかにし、美術制度に支えられなかった芸術表現の状況の一端を検討することである。それによって、美術制度の枠外にある伝統芸術が近代に遂げた展開の一面を美術史研究に加え、欧米とは異なる歴史と文化がある日本の美術史の特徴を制度外から逆照射する形で明らかにしたいと考えている。 今年度は、自筆日記を所有するギャラリーへの訪問調査を実施し、それらの閲覧と必要に応じた手書きによるメモ取りを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、調査は限定的なものとなった。しかし、今年度の終わりにかけては、訪問調査を7回実施でき、1960年代の自筆日記の閲覧を進めた。また、関連する展覧会調査と資料調査を複数回実施した。今年度に井上の自筆日記の閲覧を進めた範囲では、まとまった文章というよりは制作メモのような記述が多く、当初の想定とは異なる状況であった。ただ、それは調査を行なったからこそ判明した成果であり、引き続き、自筆日記の調査を継続する。今後の研究の展開としては、自筆日記の記述がどのような形でなされているかが不透明な状況から、まず概要を把握するという当初の方針を保持しつつ、状況に応じて分析する部分を随時抽出して論考としてまとめる方向性や、日記の記載状況の概要を作成して資料紹介として発表するような方向性も範疇に入れて研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症蔓延の影響で調査が大幅に遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症については、次年度は活動の制限が緩和されるため、訪問調査が行いやすい状況が予想される。一方で、感染症が終息したわけではないため、引き続き適切な配慮を継続しつつ調査を行う。 研究を遂行する上での課題としては、これまでの遅れを取り戻すほどの調査が可能か不透明であることと、今年度に井上の自筆日記の閲覧を進めた範囲では、まとまった文章というよりは制作メモのような記述が多く、当初の想定とは異なる状況であることの2点がある。これらに対する対応として、当初計画していた日記を一頁毎にリスト化する方法でなく、日記帳一冊毎にその全体を概観する方向で確認を進める。まず概要を把握するという当初の計画を維持しつつ、今後の調査結果に応じて、適切な変更を検討する。具体的には、随時分析する部分を抽出して論考としてまとめる方向性や、日記の記載状況の概要を作成して資料紹介として発表するような方向も範疇に入れて研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス蔓延の影響で、訪問調査が当初の計画よりも小規模に留まったため、次年度使用額が生じた。新型コロナウイルスへの対応が社会的に緩和されたことから、次年度は新型コロナウイルスの感染対策に配慮しつつも、今年度よりも規模の大きな訪問調査を行う計画である。
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