研究課題/領域番号 |
21K12890
|
研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
苫名 悠 大阪大谷大学, 文学部, 講師 (50866530)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 院政期絵巻 / 模本 / 放屁合戦絵巻 / 彦火々出見尊絵巻 / 信貴山縁起絵巻 / 伴大納言絵巻 / 後白河院 / 後崇光院 |
研究実績の概要 |
本年度の成果としてまず挙げるべきは、「後白河院政期の絵巻における故事の絵画化をめぐって―《伴大納言絵巻》・《信貴山縁起絵巻》・《彦火々出見尊絵巻》―」(『大阪大谷大学歴史文化研究』22号所収)と「描かれた「聖代」―《信貴山縁起絵巻》における醍醐天皇をめぐる一考察―」(『京都美術史学』3号所収)の2本の論考を発表したことである。前者では、原本が現存しない院政期絵巻の一つである《彦火々出見尊絵巻》を含む当該期の3作例に共通する特徴を論じた。後者は、原本が現存する院政期絵巻の作例を主たる考察の対象として取り上げたものであるが、その中で、原本が現存しない作例をも含む院政期絵巻全体に敷衍し得る、当該期の宋代絵画受容の問題などを論じた。これらの論考は、次年度以降の本研究の遂行にあたって、重要な指針を与えてくれると思われる。 また、原本が現存しない院政期絵巻の作例の一つである《放屁合戦絵巻》の模本(サントリー美術館)を調査できたことも、本年度の重要な成果として挙げられる。本作品はこれまで多くの注目を集めてきたとは言い難いが、その原本は後白河院の蓮華王院宝蔵に収められていたと想定されており、本研究にとって極めて重要な作例である。また、サントリー美術館所蔵の模本の制作が、15世紀を代表する絵巻の収集家であった後崇光院によって主導されていることも、当該期における院政期絵巻の図様の継承の様相を探る上で非常に興味深い。本年度の調査の成果は、次年度以降に論文化することとしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により作品の調査が思うように進まなかったところはあるが、本研究における重要作例の一つである《放屁合戦絵巻》を年度内に調査できたことは、大きな成果であった。また、情報の収集・論文の執筆・研究成果の公表は順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
《放屁合戦絵巻》に代表される院政期の戯画について、論考を執筆する予定である。また、《放屁合戦絵巻》と近い関係にある作例である《勝絵》の調査実施を検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により思うように調査を行うことができなかったため、旅費としての研究費の使用が当初の予定より大幅に少なかった。次年度以降、コロナの感染状況を見つつ、できる限り多くの調査を実施したいと考えているため、次年度使用額をその際の旅費に充てたい。
|