研究課題/領域番号 |
21K12892
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
武 瀟瀟 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, アソシエイトフェロー (40869129)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 瀟湘八景 / 平安文学 / 風景 / 庭園 |
研究実績の概要 |
中国で成立した「瀟湘八景」は、室町時代に日本で最も流行した水墨山水画のテーマである。絵画に限らず、文学、庭園など、多様な分野に取り入れられ、東アジア文化圏における文化の伝播―受容と変容―の研究にとって重要な位置を占める。本研究は、瀟湘八景という画題の日本での受容を、文学、絵画、庭園など、領域横断的な視点から研究し、瀟湘八景の日本での受容の様相を解明し、総合的に全貌を把握することを目指している。 本年度は、新型コロナウイルスの蔓延に伴って、予定していた日本国内の瀟湘八景と関する作品調査と各地の庭園の調査の遂行が困難な状態であったため、平安時代の文献の収集と分析を中心に研究を行った。古代庭園の中、瀟湘地域を中心に、中世絵画によく登場する中国の地名を見出し、当時の人のこれらの地名に対する認識、庭での表現について考察した。特に、瀟湘地域の比較対象とする西湖を中心に、中世以前の日本における西湖イメージを探り、さらに、東京都内の西湖(十景)の造形を造られ小石川後楽園(東京)、楽寿園庭園(現旧芝離宮恩賜庭園、東京)について調査を行われた。 また、見える光景のみならず、肌で感じる「風」も描写対象とする東アジアにおける風景画における風と大気の表現という観点から、中国と日本における「瀟湘八景」の絵画について考察し、風の表現によって、描かれた自然の中に遊んだような気持ちにさせるだけではなく、その地域にまつわる風雨の女神・湘妃など様々な古代神話と詩文を想起させ、自然と文化の二重の「臥遊」を楽しめることを報告した(「風景画における「風」の表現―「瀟湘八景」を中心」国際シンポジュウム『風のイメージ世界』口頭発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、瀟湘八景と関する作品調査と八景と関わる庭園の調査を予定していたが、コロナ感染症の流行で各地への往来及び各品観覧の調整が難しく、予定していた作品調査と庭園の調査は来年度へと延期することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本来2022年度に予定する中国湖南省と浙江省の現地調査は、依然として、実施することは困難だと想定し、2021年度に実行できなかった日本国内の作品調査と庭園の調査を中心に行いたい。しかし、コロナ感染症に関しては想定することのできない状況であり、作品調査が叶わない状況が続く場合には、東京大学史料編纂所、国会図書館での閲覧や資料収集を行い、状況を注視しながら、臨機応変に対応していくこととしたい。調査結果と研究成果については、来年度中くらいまでには、国内の学会やシンポジウムでの口頭発表、学会誌への投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の流行により、予定していたの瀟湘八景と関する作品調査と八景と関わる庭園の調査が延期となったため。
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