研究課題/領域番号 |
21K12893
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 加奈子 東北大学, 情報科学研究科, 特任助教 (80782044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がんサバイバー / アート / 自己表現 / creativity / 語り / ワークショップ / スティグマ / CMC |
研究実績の概要 |
対面では認識できない病や精神疾患などを患う人々が生活するなど、現代社会特有の環境 から脆弱な対象群として多様な「語りづらさ」を抱えた人々が存在する。AYA 世代のがん患者などがそうであろう。本研究は、AYA 世代のがん患者などを対象に、彼らが語り出すことにより、その 生きづらさやストレスが軽減されるだけではなく、セルフトランセンデンス(喪失や困難な 人生経験に直面した際に獲得される生きる意味や目的をみいだす能力のひとつ)が促進され ることを検証しようとするものである。また、語りづらさを抱えた人々が豊かな物語を「語 る」(自己表現)ためにはどのような環境が必要なのか、 何が抽出されるべきなのかについても検討する。本研究では、自己表現の 多様なあり方として「アート」が与える表現のオルタネティブな展開可能性を探る。 今年度は全国のがん患者会・ピアサポート団体とその利用者(女性のがん罹患者、サバイバー)を対象に聞き取り調査を実施した。主な内容としては、発症から罹患、治療、そして現在までの語りとその間抱えた悩みや苦悩、ストレス解消法などについて聞き取りを行った。これらの語りについて、隔週実施のゴフマン・相互行為研究会にて、スティグマや喪失の語りの観点から分析を行った。加えて、患者会団体のコロナ禍における活動について調査した。CMC(オンライン)使用によるつながりや安心安全な環境づくり、メリットデメリットの観点から、自分らしさを保ち、自己回復につながる対話ができることが満足度につながることがわかった。 これらのネットワークや知見をベースに、アート(表現と創造性)ワークショップの内容について検討し、その概要HPを作成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内での聞き取り調査やCMCプラットフォームの開発については順調だが、国外での聞き取りとワークショップがコロナ感染拡大のため実施ができていない。今後はオンラインに切り替え、データ収集する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではがん患者やサバイバーの方と密に接するため、信頼関係を構築することが不可欠である。下準備として関連ワークショップやコーディネーター育成講座を受講し認定を受けたので、今後サバイバーを対象としたオンラインオフ会(おしゃべり会)やワークショップなど主体的に企画し、実行できだろう。ようやく、このフィールドで活動する土台ができたことを実感している。 今後は、これまでの知見とネットワークをもとに、女性がんサバイバーを対象に表現を誘発するアートワークショップとその展示会を重ねていく予定である。並行して、オンラインでも表現可能なプラットフォーム開発に着手し、使用人口を増やしていきたい(継続的にインプット内容をモニタリング予定)。 当初、乳がん患者に焦点を当てようと考えていたが、今後は、全がん種の女性を対象にする予定である。関連理論や先行論文などをとおして、研究会で議論を重ねながら、分析を進めている。今後、発表や論文として業績に反映していく予定である。さらにこれまでのがん患者の語りを著書としてまとめ、関連本の翻訳にも着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍でアートワークショップ実践等が延期になったので、次年度では、プラットフォーム開発とそのワークショップも実施していく予定である。可能であれば国外の協力研究機関とも対面で実施する予定である。
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