研究実績の概要 |
昨年度に続き、二年目である2022年度は「アート」と「場所」に関する理論研究を進め、とりわけ人文地理学、芸術地理学においての先行文献レビューと精読を通して、地理学的アプローチに対する理解を深めた。新型コロナ禍・水際対策で、「杭州西湖」事例調査のための中国渡航は実現できなかったが、日本国内で近代美術をめぐるトランスナショナルなネットワークに関する言説・資料の収集、伊勢湾と瀬戸内海の実地視察を行い、理論と実証研究との繋がりの裏付けがより立体的なものとなった。 調査途中の研究成果として、国際学会にて研究発表を四件行った。また、「芸術祭」と「地方」に着目する若手研究者、実務家の間の研究会を企画し、さまざまな角度からの意見交換ができ、今後の研究に対する助言も得た。研究論文(“Tokyo Shitaya Negishi Oyobi Kinbozu and the Symbolism of Community Mapping in the Late Meiji Period”, Japan Review, 国際日本文化研究センター, 37, 2022年12月, pp. 123 150)が一件公開され、クリティカル・カルトグラフィー(批判的地図学)と都市社会学に視座を据え、「場所」の持つ意味を問いかけ、近隣関係・文人グループを含むソーシャルネットワークの内実に迫り、「コミュニティ」と「コミュニティ・マッピンング」という概念の精緻化を試みた。
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