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2023 年度 実績報告書

復員軍人の「心の中の戦争」―精神科診療録の分析と家族への聞き取りによる可視化

研究課題

研究課題/領域番号 21K12909
研究機関広島大学

研究代表者

中村 江里  広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (20773451)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード戦後日本 / トラウマ / 患者と家族の歴史 / 未復員 / 精神医療アーカイブズ
研究実績の概要

2023年度は、前年度に引き続き、復員兵の家族へのインタビュー調査が順調に進み、14名の方にご協力いただくことができた。第二に、診療録調査については、1945年から1980年代までに退所した入院患者について入退院日、病名等の基礎的なデータの入力を終えた。第三に、戦争とトラウマに関するオンラインの学際シンポジウムを三回行い、のべ290名の方にご参加いただいた。
本研究は、以下の二つの目的のもとに行われた。(1)戦争という大規模暴力が個々の旧軍人の精神や家族との関係、彼らを取り巻くコミュニティ、ひいては戦後の日本社会全体に及ぼした長期的な影響を明らかにすること。(2)敗戦や非軍事化という大きな変化が、心を病んだ旧軍人に対する周囲の対応や当事者の意識にどのような影響を与えたのか(与えなかったのか)を明らかにすること
本研究全体を通じて、特に顕著な成果をあげられたのは、目的(1)の戦争が兵士と家族との関係に及ぼした影響についてである。戦争のトラウマが家族に及ぼした影響としては、現在のところ以下の三点に集約できる。(1)戦場や兵営から戦後の家庭に連なる暴力の連鎖、(2)元兵士のメンタルケアへの公的なサポート不足による、妻や子どもへの過重な負担、(3)元兵士の子どもや妻のメンタルヘルスへの影響。
目的(2)については引き続き診療録の詳細な調査が必要である。また、目的(1)のコミュニティや戦後日本社会への影響については、戦争とトラウマの学際シンポジウムを通じて多くの戦争体験者の事例に触れる機会があったため、今後他の戦争体験者との共通点や元兵士に固有の問題について考察を深めたい。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] 心を壊された日本軍兵士たち-アジア・太平洋戦争とその長期的影響-2023

    • 著者名/発表者名
      中村江里
    • 雑誌名

      精神医学史研究

      巻: 27(1) ページ: 13-17

  • [雑誌論文] 「社会的苦しみ」としての戦争トラウマ2023

    • 著者名/発表者名
      中村江里
    • 雑誌名

      BRAIN and NERVE

      巻: 75(9) ページ: 1059-1064

  • [学会発表] 戦後家族の中の「戦争」―復員軍人のトラウマと世代間の影響2023

    • 著者名/発表者名
      中村江里
    • 学会等名
      第22回日本トラウマティックストレス学会
  • [学会発表] 兵士たちの心の中の戦争2023

    • 著者名/発表者名
      中村江里
    • 学会等名
      日本看護歴史学会
    • 招待講演
  • [学会発表] トラウマ研究から見た坂本正直作品2023

    • 著者名/発表者名
      中村江里
    • 学会等名
      立命館大学国際平和ミュージアム 平和教育研究センター 第30回メディア資料研究会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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