研究課題/領域番号 |
21K12912
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
尾崎 名津子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (10770125)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 占領期 / 地方出版 / GHQ/SCAP検閲 / 用紙統制 / 紙不足 / 北海道 |
研究実績の概要 |
2021年度は計画の初年度にあたり、本研究の目的のうち特に占領期の地方出版に関する基礎的な調査を行った。本研究課題では占領期の北海道と九州に焦点を当てているが、このうち本年度は北海道の出版について、占領期に限定せず近代の同地における出版文化について広く知見を得ることに努めた。道内には既に明治期より印刷業組合が存在するなど、豊饒な出版文化がある。また、GHQ/SCAP検閲についても、『北海道の出版文化史―幕末から明治まで』(北海道出版企画センター、2008年)などにおいて既に詳細な概要が記述されている。さらに、高倉新一郎『北海道出版小史』(日本出版協会北海道支部、1947年)は本研究が対象とする時期に発行されたものであり、ここに記載されている印刷・出版関係の事業者の情報は、今後の実地調査において大いに活かされるものであることが判った。これらの情報を踏まえつつ、メリーランド大学のプランゲ文庫でこれまで代表者が調査・把握を進めている、九州地方の検閲に関する文書類と比較検討することで、それぞれの地方における検閲の実態が、その特色とともに明らかになることが今後期待される。 成果としては、今後の本研究遂行に係る問題点が明確になったことが挙げられる。それは、元から印刷・出版のインフラが整い、独自の展開を見せていた北海道(特に札幌)の地に、占領期(あるいは戦中からその動きはあったと推察される)に至って東京を中心とする内地の事業者たちが参入してきた契機や経緯に関する事実が、未だそれほど明らかでない点である。この解明が本研究の目的の一つとして新たに、また具体的に浮上した点が、本年度の主要な成果だと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に係る解き明かすべき主要な問題点が明確になった。一方で、アメリカと北海道で行う予定としていた実地調査を、今般の社会状況(新型コロナウイルス感染症に因る)によって行うことができなかった。それゆえ「おおむね順調」としたが、本研究の目的と研究計画に照らせば進捗に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実地調査を開始するとともに、得られた知見に基づく論文の執筆や整理したデータの公表を積極的に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画の柱は海外・国内の各機関における実地調査であるが、本年度は社会状況によりその調査を遂行することが叶わなかった。ゆえに次年度での調査の遂行と経費の使用を計画している。
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