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2021 年度 実施状況報告書

「抵抗詩人」の自己像と歴史化の再検討ーー金子光晴・山之口貘・許南麒と戦後詩壇

研究課題

研究課題/領域番号 21K12914
研究機関東京大学

研究代表者

逆井 聡人  東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50792404)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード抵抗運動 / 在日朝鮮人文学 / 戦後詩 / 文学批評 / ポストコロニアル批評
研究実績の概要

本年は、当該研究の開始年度として、分析対象の詩人である金子光晴、山之口貘、許南麒の三詩人それぞれの全集や関連文献を収集し、詩作の全体像を把握することに努めた。さらに三詩人だけでなく、同時代の文学作品や周辺の言説状況、政治社会状況を把握するため、あるいはそれらの状況の歴史的位置づけを検討するために、歴史学や政治学の書籍を収集し、全体的な視野を広げることを目指した。
また、本研究が掲げる目標の二つである戦後詩議論のアップデート、文学批評の新手法の模索に向けての活動として、勉強会の立ち上げや国際的な場における議論の機会を得ることなどがあった。具体的には学内外の研究者や大学院生が参加する「ナラトロジー勉強会(仮称)」を立ち上げ、8月の第一回を皮切りに、3月までに計5回の研究会を開催した。この研究会は今後も定期的に開催していく予定である。国際的な場における研究発表の機会としては韓国で二回、アメリカで二回のオンライン国際学術会議に講演者・パネリスト・討論者として参加した。
研究の成果物としてはオンライン記事を一本、書評を一本、美術展評を一本発表した。またZoomでの配信、及びYouTubeで後日動画公開となった現代芸術をめぐるパネル・ディスカッションが二本ある。いずれも本研究課題の東アジアの帝国~冷戦期における文学・芸術上の「抵抗運動と悔恨」をめぐる議論であり、本研究の基本姿勢を設定するうえで重要な業績となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画立案時から予想していたように、本年度もコロナ禍による海外渡航と国内移動の制限により、物理的な移動を伴った資料収集及び学術交流は困難となったが、オンライン会議を活用した研究活動を展開することで交流が可能となった。特にオンライン会議の特性である「手軽さ」によって多くの新しい国外の研究者と知り合うことができ、同時にこれまでの研究者ネットワークを維持することもできた。本研究にとってはこのような研究者ネットワークは発表の場を確保するうえでも、情報収集の上でも極めて重要なため、コロナ禍の中でも維持拡大ができたことは大きな成果として考えられる。
また国内外を移動する時間が大幅に減った分、文学作品に向き合う時間が増え、今後の作品分析に向けた基礎的な思考が組み立てられたことも重要な成果と考えたい。

今後の研究の推進方策

昨年度はオンライン会議によって研究ネットワークの拡大と維持はできたが、新しいアイディアや議論の枠組みを創出するためには、他の研究者たちとの交流のさらなる深化が必要である。そしてコロナ禍では交流の深化のためには、やはり対面のコミュニケーションが重要であることを改めて気が付かされた。2022年度に入ってから徐々にコロナウィルス感染拡大防止を目的とした制限が外れつつある。今後はオンライン会議の経験も活かしながら、同時に意識的に対面での学術交流の機会を増やしていきたい。
また昨年度の国際会議を通して既に動き出している論文集の出版計画を推進することも含め、積極的に論文や評論などの成果物の発表を行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルス感染拡大防止対策により海外渡航が制限され、また国内でも移動の制限があったため、渡航が可能であった場合に想定していた海外渡航・国内出張が不可能になり、その分の旅費が当年度の未使用分となった。次年度以降に、国内外での学会発表及び資料調査に使用する計画である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)

  • [国際共同研究] the University of Hawai’i/University of Utah(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      the University of Hawai’i/University of Utah
  • [国際共同研究] 東国大学/淑明女子大学(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      東国大学/淑明女子大学
  • [雑誌論文] Min Jin Lee’s Pachinko: The Fight Against Structural Racism and the Time-Lag of Translation (Zainichi, COVID, #BLM)2022

    • 著者名/発表者名
      Akito Sakasai
    • 雑誌名

      Zainichi Studies

      巻: - ページ: -

  • [雑誌論文] 書評 松本和也著『太平洋戦争開戦後の文学場 : 思想戦/社会性/大東亜共栄圏』2021

    • 著者名/発表者名
      逆井聡人
    • 雑誌名

      昭和文学研究

      巻: 83 ページ: 229-232

  • [雑誌論文] 繋ぐこと、繋がること、その〈証=あかし=灯〉 青森県立美術館「東日本大震災10年 あかし testaments」展2021

    • 著者名/発表者名
      逆井聡人
    • 雑誌名

      図書新聞

      巻: 3527 ページ: 8-8

  • [学会発表] Kim Talsu's Self-Censorship Conundrum2022

    • 著者名/発表者名
      Akito Sakasai
    • 学会等名
      Empire in Motion
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ナショナル・ランドスケープを越えて2021

    • 著者名/発表者名
      逆井聡人
    • 学会等名
      東国大学文化学術院叙事文化研究所・東岳語文学会主催書評会「逆井聡人著『〈焼跡〉の戦後空間論』」
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 隔離と居場所をめぐる詩―病者への嫌悪に抗う2021

    • 著者名/発表者名
      逆井聡人
    • 学会等名
      International Conference "Disgust in the Pandemic Era: an Intervention of Transversal Humanities"
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 不気味な親米と日本のポップカルチャー2021

    • 著者名/発表者名
      逆井聡人
    • 学会等名
      グローバル化する反米――遠藤泰生編『反米 共生の代償か、闘争の胎動か』(東京大学出版会、2021 年)をめぐって
    • 招待講演
  • [学会発表] Inter-Asian and Transpacific Exchanges (as discussant)2021

    • 著者名/発表者名
      Akito Sakasai
    • 学会等名
      Culture of Crossing: Transpacific and Inter-Asian Diaspora
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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