研究課題/領域番号 |
21K12914
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
逆井 聡人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50792404)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 抵抗詩 / 金子光晴 / 関東大震災 / 戦後詩壇 / 国際日本研究 |
研究実績の概要 |
3年目である2023年度は、計画時に構想していた「東アジアの抵抗詩とその歴史化」をテーマとする国際的な議論の場を設けるという目的を十分に達成できた。 2023年6月に開催された国際学会AAS in Asia (韓国・大邱)にて、'Literary Echoes of the 1923 Great Kanto Earthquake'というパネルを組み、香港大学のDaniel Poch、早稲田大学のPau Pitarch、東京外国語大学のIrina Holca、韓国・淑明女子大学の金志映各氏と共に、関東大震災の記憶をめぐる議論を行った。その中で、逆井は金子光晴の詩人像がいかに変遷したかを論じた。この発表をもとにした論考は雑誌『現代思想』の9月臨時増刊号に掲載された。 また、5月19日に『復刻版「ぼくたちの未来のために」刊行記念シンポジウム』にディスカッサントとして参加し、戦後詩壇の初期段階について議論した。このシンポジウムの記録は、『明治大学日本文学』第48号(2024年3月刊)に掲載されている。 2024年3月10-11日にカナダのブリティッシュ・コロンビア大学で開催されたシンポジウム'Rethinking Global Japanes Studies'にパネリストとして招待され、現在の日本研究の国際性について議論した。3月14-17日にシアトルで開催されたAAS 2024に参加し、北米の日本文学研究者と交流し、今後の共同研究の可能性について話し合った。 上記のように、本年は計画以上の成果を出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【研究実績の概要】でも示したように、計画していた国際学術交流を英語、日本語の両方で活発に行うことができ、またそこで発表した内容も、雑誌招待論文、あるいは座談会記録として出版することができたため、当初の計画以上に進展していると言える。本年度に交流した研究者は日本国内外の研究者である(国際的交流)だけでなく、歴史学や政治思想、ジェンダー研究、デジタル人文学、アメリカ文学、韓国文学等の日本文学とは別の分野の研究者であるため、学際的な交流ともいえる。国際的かつ学際的な交流こそ、本年に計画していたことであり、その点においても計画以上の成果といってよい。 内容としては、現段階において、計画書に記載していた三人の詩人(許南麒、金子光晴、山之口獏)のうち、許と金子に関する「抵抗」論は書き終えている。また、第二次大戦後の日本詩壇の状況を思想的に捉えるということに関して、シンポジウムを通して新しい知見を得ることができ、そのことについて文章として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、本研究の最終年度として、国外でのシンポジウムと日本文学主要雑誌への論文の掲載、そして単行本の出版計画を進めることを計画している。 すでに、韓国・ソウル大学での招待講演が企画されており、そこで本プロジェクトの総括になるような講演をすることを考えている。また、現時点(5月)で日本文学主要雑誌への投稿を完了している。英語や韓国語での論文発表も計画している。 単行本の出版計画に関しては、出版企画書を作成し、出版社とコンタクトを取ることを次年度の前半までに行うことを考えている。 内容としては、これまでまだ論じられていない詩人である山之口獏に関して、特に集中して検討する。また、敗戦直後から米軍占領終了までの間に「抵抗」論がどのように展開したかについても思想的に概観する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2024年3月に、カナダとアメリカでの研究滞在を行いその際、カナダでの宿泊費が受け入れ大学側の支出となり、予定していたよりも低い金額で滞在ができた。また、海外から研究者を招へいすることを計画していたが、当該研究者が自分の研究費で渡航することとなり、その分の支出が減った。次年度使用額は、次年度に計画している国外での研究滞在費用として使用することを検討している。
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