研究課題/領域番号 |
21K12917
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高尾 祐太 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 助教 (20894380)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中世文学 / 中世の言語観 / 古注釈書 / 性霊集 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染防止のための移動制限により、現地に赴いての調査は進んでいないが、情勢が落ち着き次第、調査を開始する予定である。 本年度は、これまでに収集した資料、特に杲宝『性霊集緘石鈔』の翻刻と分析を引き続き進めた。また、本研究の目的である、中世の言語観と文芸との関わりを調査する研究の一環として、金春禅竹作の能《芭蕉》の草木成仏説に注目し、台密理論の大成者である安然の草木成仏説を立体的に復元し、そこから改めて《芭蕉》の詞章を読み直すことで、禅竹が《芭蕉》に達成しようとした美の解明を試みた。この成果は、「能《芭蕉》の構想と草木成仏説」(高橋悠介編『宗教芸能としての能楽』勉誠出版、2022年、所収)として公表した。ただし、禅竹の思想は中世の思想を広く取り入れていて重層的であり、なお中世の草木成仏説を掘り起こす必要がある。そこで、引き続き、禅竹と親交のあった東大寺戒壇院の志玉の草木成仏説を調査し、それと安然の草木成仏説の共通点を探ることで、汎中世的な草木成仏説に光を当て、そこから禅竹作の能《杜若》を読み直す研究を行っている。この成果は近く公表する予定である。これら一連の研究で取り上げた草木成仏説は、単に心を持たない草木が成仏するか否かを論じたものではなく、言語と存在をめぐる仏教の思索が文芸の世界に表出したものである。その点で、これらの成果は、本研究で『性霊集』古注釈書を通して探求したい、中世の言語観と文芸の問題領域と密接に関わるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染防止のための移動制限の影響はやむを得ない。その中でも着実の資料の翻刻と調査を進めている。また、本研究の問題領域と密接に関連する成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査の障碍となっている現在の情勢が落ち着き次第、現地での調査を開始する予定である。また、本年度と同様に、関連する問題についても引き続き調査を行う。
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