研究課題/領域番号 |
21K12933
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
雲岡 梓 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (30732888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 荒木田麗女 / 連歌 / 伊勢神宮 / 百韻連歌 |
研究実績の概要 |
共著にて出版された『百韻連歌撰注釈 第一巻』(連歌注釈書刊行会編、新典社、2023年)において、62~63・96~97・114~115・142~143・174~175・204~205・234~235pの執筆を担当した。同書は未注釈の百韻連歌、「正慶元年九月十三夜称名寺阿弥陀堂百韻」「紫野千句第一何路百韻」「延徳四年四月八日何船百韻」「永禄三年十一月十一日何路百韻」「文禄三年三月四日何衣百韻」に関して、信頼できる本文の作成・語注・現代語訳・付合の解説を施した注釈書である。その出版には、これまで前句と付句の関係、一句としての意味、下敷きになっている本歌など、詳細な内容を知ることができなかった百韻連歌について、誰にでも容易に意味内容を知ることを可能にしたという意義がある。 また、2023年11月12日に同志社大学にて開催された第2回賀茂社家セミナーにて、「社家の女性、荒木田麗女の連歌」との題で講演を行った。伊勢神宮神官の娘として生まれ、伊勢神宮神官の妻・母となった荒木田麗女の「社家の女性」としての側面に注目し、伊勢神宮で儀式として伊勢海連歌・岩井田初連歌・月見連歌・外宮初連歌・浜出連歌などの連歌会が興行されていたことと、麗女が生涯連歌に取り組んだこととの関連性を述べた。俳諧が流行するとともに連歌が衰退して行った江戸時代において、麗女が俳諧ではなく連歌に熱中した理由には、本人の嗜好の他にも「社家の女性」という立場・環境が関わっていることを明らかにした点に本研究の意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年に出産し、産前産後の休暇および育児休業を取得したことにより、研究計画が約1年分遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
「産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請書」を提出し、研究計画を1年分後ろ倒しすることが認められたため、2024年度から1年遅れで当初の研究計画を遂行していく予定である。 具体的には、麗女の代表作である歴史物語『池の藻屑』について、最善本である家雅清書本を底本に、詳細な頭注と現代語訳の作成を進める。『池の藻屑』は歴史物語の系譜の最後尾に位置する重要な作品であるにもかかわらず、流布本に基づいた簡素な翻刻本文しか刊行されていない。そこで、最善本を底本にした詳細な注釈書の出版を目指すとともに、注釈を行う中で『池の藻屑』の出典・諸本の異同・内容の特徴などを明らかにする計画である。 また、『慶徳麗女遺稿』には津の儒学者奥田三角より『池の藻屑』に序文を贈られたとの記載があり、伊勢の神宮文庫に三角自筆の「池藻屑序」が現存するにもかかわらず、現存する『池の藻屑』の諸写本には三角の序文が収められていないことが判明した。そこで、三角と麗女の交友関係等について調査し、三角の序文が『池の藻屑』に収録されずに終わった経緯を論文にまとめ、公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年に出産し、産前産後の休暇および育児休業の取得のため、「産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長承認申請書」を提出して、研究計画を1年分後ろ倒ししたことで次年度使用額が生じた。 次年度使用額分については、今後歴史物語『池の藻屑』の注釈書作成を進める中で、神宮文庫(三重)・国文学研究資料館(東京)・国立国会図書館(東京)・名古屋大学附属図書館(愛知)等にて諸本の調査・収集を行う際の旅費として使用する計画である。 また、荒木田麗女の紀行文が後代の女性に与えた影響を調査するため、山鹿の歌人帆足京が執筆した紀行文『刀環集』の調査を行う。その際に『刀環集』写本を所蔵する鹿児島県立図書館に調査・資料収集に行くための旅費としても使用する計画である。
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