研究課題/領域番号 |
21K12935
|
研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
高橋 諒 天理大学, 図書館, 司書研究員 (50880233)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 中古文学 / 文献学 / 本文校訂 / 校本 / 『うつほ物語』 |
研究実績の概要 |
本研究は、『うつほ物語』諸本のうち、従来十全たる検証がなされてこなかった系統本について、『うつほ物語』全巻の校本を作成することによって、各本文系統の性格や伝流を詳らかにする。また、蔵書目録や古記録類等の外部資料を参看しつつ、校本を活用し各系統の本文を比較対照することで、『うつほ物語』諸本における本文成立史を解明することを目的とする。その上で、『うつほ物語』のように古写本の残らない作品に対する本文批判の方法を新たに構築することを目指す。 具体的には、(A)『うつほ物語』諸本および関係諸資料の博捜・調査、(B)収集した伝本の翻刻に基づいた校本の作成・分析・考察の2点を主たる方法として明らかにする。 今年度は本研究課題の初年度にあたり、他三系統本や来歴を伝える関係諸資料を博捜し、悉皆調査および紙焼写真等の収集を行った。他三系統本については、現在所在が確認できるものを中心に行い、概ね収集を終えることができた。収集できていないものは、未撮影のものであるため、新型コロナウイルスの影響も考慮にいれつつ、時期を見て撮影を今後行っていく予定である。伝本の悉皆調査は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、いくつかの所蔵機関では取り止めることとなった。そのため、今後時期を見つつ調査を行う。関係諸資料は、収集については既に刊行されている影印叢書を中心に行い、概ね集めることができた。ただ、いくつかの資料は影印叢書にはないため、今後紙焼写真を収集する必要がある。なお、調査については今年度は行えていない。 上記の調査・収集を踏まえて、現存四系統ある『うつほ物語』の各系統本文を対照できるように、各伝本の翻刻や校本データ作成を行った。悉皆調査により得た伝本の書誌および作成したデータに基づいて、今年度は論文を1本執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初予定通りの進捗であったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、いくつかの調査を中止・延期せざるを得なかった。代わりに伝本の紙焼写真の収集・分析に努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在確認されている他系統の伝本については引き続き調査を継続し、併せて本文比較による分析を中心に進めていく。また、『うつほ物語』関連資料の博捜・収集・分析も継続する。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、資料調査の予定が見通せない状況にあるが、資料調査が可能となった際に動き出せるよう、既に収集した資料の詳細な分析を進めつつ、関連資料の精査に努めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定していた調査や学会参加が取りやめになったために、旅費支出が中心である本課題においては、次年度使用額が生じた。事態の収束次第、調査を実行できるように事前準備に専念する。
|