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2022 年度 実施状況報告書

明代小説『封神演義』書籍化の過程と背景

研究課題

研究課題/領域番号 21K12941
研究機関九州大学

研究代表者

岩崎 華奈子  九州大学, 人文科学研究院, 助教 (30822887)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード周之標 / 盛明雑劇 / 呉姫百媚 / 戯曲 / 妓女
研究実績の概要

本年度は『盛明雑劇二集』に収録される「相思譜」雑劇に関する研究を行った。『盛明雑劇』は沈泰(生卒年不詳)が編纂した、明代に制作された雑劇の選集である。初集・二集にはそれぞれ30種を収録し、「相思譜」を収める二集の刊行年は、従来の研究で崇禎3~4年(1630~1631)頃とされている。この「相思譜」の作者は「呉中情奴」の筆名を用い、内容は未だ進士及第せぬ周生と妓女王嬌如との悲恋を描いている。申請者はこの雑劇が実話に基づいていることを発見した。周生はすなわち明末の文人周之標、王嬌如は蘇州の妓女王賽(字が嬌如)である。周之標の編纂した花案(妓女の品評書)『呉姫百媚』巻一に収録される王賽についての批評と詩文には二人の愛情と破局が記されており、その内容はおおよそ「相思譜」雑劇の筋書きと一致するのである。『呉姫百媚』は中国国家図書館と蓬左文庫にのみ伝存する稀覯本であり、中国国家図書館本は中華再造善本として影印が出版され、近年公式ウェブサイトで書影が閲覧できるようになったものの、未だほとんど知られていない文献である。しかも、中国国家図書館本は王賽部分がほとんど失われているため、彼女の字や周之標の悲恋については蓬左文庫本を見なければ知ることができない。申請者は蓬左文庫本『呉姫百媚』と「相思譜」雑劇を対照し、雑劇が『呉姫百媚』王賽記事に拠ること、また戯曲が施した事実と異なる創作箇所について明らかにした。作者「呉中情奴」がいかなる人物であるかは今後の課題だが、おそらく小数部発行であったと考えられる『呉姫百媚』の読者、あるいは周之標・王賽に近しい、彼らの恋愛事情を良く知る人物である可能性が高いと見ている。
以上の研究成果を、第319回中国文藝座談会(九州大学中国文学会、2022年7月開催)において口頭発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで主に『封神演義』の序文撰者の一人である周之標について研究を進めている。申請者は戯曲・小説など俗文学の生まれる(発達する)場として妓楼に着目しており、本年度の成果もその観点より重要である。
なお、当初予定にはなかったことだが、一般向けのセミナーでこれまでに行ってきた周之標に関する研究の成果を公開することができた(「周之標 女性の美と才へのまなざし」、朝日カルチャーセンター福岡教室、2022年9月)。

今後の研究の推進方策

本年度の成果は次年度に論文化する。周之標に関する研究としては、彼の編纂した戯曲選集『呉ユ萃雅』の文献調査を近く行う計画である。また今後はもう一人の序文撰者である李雲翔とその周囲の文人について、地方志や各種文献を利用し調査・考察を進めていきたい。
もう一つの課題であるテキスト分析による『封神演義』編纂過程の考察については、分析の基礎となる電子テキストの入力作業を次年度以降も引き続き行う計画である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度より引き続き新型コロナウィルスの影響により、学会等の多くがオンラインでの開催(あるいは対面とオンラインの併用)となったことから、当初予定よりも旅費の執行が少なかった。代わりにリモートでの研究作業、学会参加に必要な物品の購入が多くなったものの、全額を執行するに至らず、次年度使用額が発生した。
現在はコロナウィルスによる行動制限もほぼ解除された状況であるため、学会への対面参加を当初計画より増やし、積極的な成果発表と意見交換に活かす予定である。

備考

一般向けセミナーにおける講演:「周之標 女性の美と才へのまなざし」、朝日カルチャーセンター福岡教室、2022年9月

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 『盛明雑劇二集』所収「相思譜」について2022

    • 著者名/発表者名
      岩崎華奈子
    • 学会等名
      第319回中国文藝座談会

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公開日: 2023-12-25  

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