研究課題/領域番号 |
21K12943
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
FAN KEREN 神奈川大学, 外国語学部, 助教 (80848044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 李卓吾 / 容与堂 / 西廂記 / 琵琶記 / 紅払記 / 幽閨記 / 玉合記 |
研究実績の概要 |
本年度は、明代の万暦年間、容与堂という書坊が刊行した『西廂記』『琵琶記』『紅払記』『幽閨記』『玉合記』の五つの戯曲作品及び小説の『水滸伝』における短評を中心に研究を行った。 まず、各戯曲作品における短評を抽出し、特に多く使われている「妙」と関わりのある評語は、作品のどの部分に付されるのか、批評者のどのような考え・視点を反映しているのかを詳しく考察し、総評や圏点との関係を考慮しつつ、その特徴及び共通点の有無を分析した。 次に、『水滸伝』における「妙」、特に眉批・傍批として付された「妙」と関わりのある評語を上と同じ視点を用いて考察を加え、その特徴や前述した五つの戯曲作品における同種類の評語と共通点があるのかを分析した。 最後に、以上の六つの作品において「妙」の次に最も多く使われている「画」と関わりのある評語の特徴や使用基準に着目し、同じように素晴らしい描写に使われている「妙」と「画」の評語はどのように使い分けされているのかに考察を加えた。 以上の考察を踏まえて、論文「『初刻五種伝奇』における評語について―「妙」を中心に―」としてまとめた。容与堂刊行のこれらの六つの作品において、「妙」は数が多い作品ほど、様々な種類の描写に付される傾向が強く、さらに、五つの戯曲作品と『水滸伝』に「妙」と「画」が付されている箇所を比較すると、両者の区別が明確につかないことが多いため、これらの批評が同一人物の手によるものであれば、「妙」と「画」の区別をはっきりと意識することなく所々に評語を付けたのではないかと思われる。同一作品の中で、批評の基準のずれが窺えることを踏まえると、容与堂刊のこれらの作品における批評、特に素晴らしい描写を批評する「妙」や「画」などの簡単な評語は批評者の「李卓吾」の観点をアピールするために、複数の手によって書かれたものではないかと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りの調査を行うことができたため、研究がおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は台湾国家図書館に所蔵されている『三刻五種伝奇』における短評に考察を加える予定である。同書には『浣紗記』『金印記』『香嚢記』『繍襦記』『鳴鳳記』という五つの戯曲作品が収められているが、『浣紗記』に付される「三刻五種伝奇総評」によると、「三刻」された作品には『繍襦記』ではなく、『錦箋記』が含まれるはずであったことが分かる。そのため、以上の六つの作品を一つのグループとして、前年度の調査研究で用いた方法を使用し、これらの作品に見られる短評を抽出し、特に多く使われている「好」と関わりのある評語は、作品のどの部分に付されるのか、批評者のどのような考え・視点を反映しているのかを詳しく考察し、総評や圏点との関係を考慮しつつ、その特徴及び共通点の有無を分析する。 次に、以上の考察結果及び先行研究を踏まえ、「三刻」された五つの作品は果たして何の作品なのかという問題について検討する。 最後に、これらの六つの作品における「妙」の使用状況についても考察を加え、前年度の考察結果と比較することによって、『三刻五種伝奇』と容与堂刊行の五つの戯曲作品との関係について考える。
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