研究課題/領域番号 |
21K12952
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
古井 義昭 立教大学, 文学部, 准教授 (30815634)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ハーマン・メルヴィル / 他者 / 個人主義 / 共同体 / 情動理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Herman Melville(1819-1891)による諸作品を「他者」という観点から包括的・多角的に論じることである。2021年度は、この研究課題を遂行すべく複数の論文執筆に注力し、査読誌に投稿の上、採択されることが叶った。まずはメルヴィルのスケッチ集「The Encantadas」における、アメリカにとっての国家的他者であるスペインの表象をトランスナショナル研究の観点から論じた論文が、米国メルヴィル協会の機関誌『Leviathan』に掲載された。また、メルヴィルの遺作『Billy Budd』における他者の内面表象について論じた論文が、Oxford大学出版局発行の学術誌『Literary Imagination』に掲載された。 さらに、すでに査読に通り掲載が決まっている論文として、長編小説『Israel Potter』における他者を求める感情、つまり寂しさ(loneliness)について論じた論文がTexas大学出版局発行の学術誌『Texas Studies in Literature and Language』に掲載予定である。また、メルヴィルの第一長編小説である『タイピー』において、人種的他者との遭遇を通じて主人公が自己の中に他者を見出す過程を論じた論文が、日本の主要学会の機関誌に掲載予定である。二つの論文とも、6月頃の掲載が予定されている。 上記四つのいずれの論文も、本研究課題が目指す、多様な観点からメルヴィルの他者表象に迫るという目的に合致したものであり、着実にプロジェクトが進行していると総括できる。また、2022年度中には二つの国際学会で本研究に関する研究発表を予定しており、今後の研究の発展も十分に見込める状況にある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のとおり、すでに本研究に関係する四つの論文が出版済み、あるいは出版が決定しており、順調に進展しているといえる。また、2021年度中に決定した研究発表が複数あり、今年度の研究活動に繋げる準備ができたことも、本研究計画が着実に進行している要素として挙げられる。研究発表だけではなく、論文に関しても昨年度から書き進めているものが一本あり、それを今年度中に出版できるように努力していきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度はメルヴィル作品に関する複数の研究発表を予定している。まず第一に、6月にパリで行われる国際メルヴィル学会では『Israel Potter』に関する発表を行う。第二に、7月にはベルリン自由大学における国際ワークショップにおいて、『Moby-Dick』に関して研究発表、並びに文学研究における「寂しさ(loneliness)」の表象をめぐって討論を行う予定である。第三に、10月には日本アメリカ文学会全国大会で『Battle-Pieces』に関する発表を予定している。上記の前者二つに関しては発表原稿の元となる論文が既にあるが、『Battle-Pieces』に関する論文はまだ作成中であり、今年度中に論文としてまとめ、海外の有力誌に投稿したい。 また、今年度は九月から一年間、フルブライト特別研究員としてカリフォルニア大学バークレー校に滞在予定であり、ホスト教員でもあるメルヴィル研究の権威、Samuel Otter教授の意見を仰ぎながら、本研究計画を進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたより学会出張費として使用できなかったため。2022年度は学会出張が複数予定されており、そのために繰越額を含め使用する予定である。
|