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2021 年度 実施状況報告書

19世紀末フランスにおける自由詩の研究――レニエ、ヴィエレ、ヴァレリーを中心に

研究課題

研究課題/領域番号 21K12962
研究機関名古屋大学

研究代表者

鳥山 定嗣  名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80783117)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードフランス近代詩 / 自由詩 / 韻律 / 翻訳 / ヴァレリー / ボードレール / ジャック・ルーボー
研究実績の概要

本研究は19世紀末フランスにおける「詩の危機」、すなわち伝統的な「定型詩」が解体する一方で「自由詩」という新たな形式が台頭した近代詩の転換期に注目し、自由詩を定型性と非定型性がさまざまな度合いで混淆するハイブリッドな形式と捉え直した上で、フランス韻律学の知見を活用し、自由詩の本質と多様性を明らかにする試みである。
初年度は、研究実施計画に記したように、ヴァレリーに重点をおいて研究を行った。研究成果は以下のとおりである。
1)当初はヴァレリーにおける自由詩と散文詩の弁別を問題とする予定であったが、ボードレール生誕200周年記念シンポジウムで発表することになったために主題を変更し、ボードレールとヴァレリーの詩作品を比較考察した。具体的には両詩人の作品に頻出する「蛇」の主題に注目し、それが作品の内容だけでなく、韻律や脚韻などの形式面、さらには作品の構造にも深く関わっていることを明らかにした。本研究との関わりでは、「蛇」の形象が韻律や脚韻における「ゆらぎ」(定型性と非定型性の中間状態)を象徴する機能を担っている点を指摘したことが重要である。
2)前年度終了した「若手研究B」から継続している研究の成果として、「ヴァレリーと翻訳」に関する日本語論文とフランス語論文を収める図書が日仏両国で出版された。両論文では、ヴァレリーによる英詩やラテン詩のフランス語訳を対象として、翻訳スタイルの変遷(自由詩形式の翻訳から韻文訳へ)を概観し、ヴァレリーの翻訳論の特徴を指摘した。
3)現代詩人ジャック・ルーボーによる和歌のフランス語訳に関する論考を発表した。ルーボーは本研究の主な対象ではないが、翻訳と自由詩の関係という点で本研究と関わる。論文ではルーボーによる自由詩形式の翻訳が「借用」という発想に基づいている点を指摘し、その翻訳行為を「本歌取り」や「借景」といった日本の歌論・風景美学と関連づけて論じた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度はヴァレリーに重点をおいて研究を行ったが、研究実績の概要にも記したように、ボードレール生誕200周年記念シンポジウムにおける発表が決まったため主題を変更した。ボードレールとヴァレリーの詩作品の比較という主題は当初予定していたものではなかったが、本研究を進める上で新たな視点をもたらす重要なものとなった。他方、当初予定していたヴァレリーの自由詩と散文詩の研究については、いまだ研究成果として公表する段階には至っていないが、研究実施計画に記した『カイエの散文詩』や詩と散文が混在する作品群(『メランジュ』『テル・ケル』など)を対象として自由詩を抽出する作業を進めており、研究全体の進捗に支障はないと考えている。

今後の研究の推進方策

今後はヴァレリー研究を継続しつつ、研究実施計画に即して、アンリ・ド・レニエとフランシス・ヴィエレ=グリファンの自由詩に関する研究に着手する。次年度はレニエに重点をおいて研究を進める。具体的には、フランスのアンリ・ド・レニエ読者協会が刊行している雑誌(Tel qu’en Songe, no 7, revue de la Societe des Lecteurs d'Henri de Regnier)に、レニエの自由詩に関する論文を寄稿する予定である。レニエは近年フランスにおいて再評価の機運が高まっている作家だが、本格的研究はまだ端緒についたばかりであるため、まずはレニエの詩の全体像を概観することから始め、特に本研究が注目する「定型性と非定型性の混淆」という観点から、レニエの自由詩の変遷とその特徴を明らかにしようと試みる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] La Traduction comme emprunt : Les ≪ poemes empruntes au japonais ≫ par Jacques Roubaud2021

    • 著者名/発表者名
      Toriyama Teiji
    • 雑誌名

      ALTERNATIVE FRANCOPHONE

      巻: 2 ページ: 23~39

    • DOI

      10.29173/af29421

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ボードレールとヴァレリー――「蛇」をめぐる変奏2021

    • 著者名/発表者名
      鳥山定嗣
    • 学会等名
      ボードレール生誕200周年企画「〈時間-生〉芸術の研究――ボードレールとその受容」(京都大学人文科学研究所)
  • [図書] Les chaines trajectives de la reception et de la creation. Une etude franco-japonaise en traductologie ("Valery et la traduction : Comment traduire la poesie ? Qu’est-ce que traduire ?")2021

    • 著者名/発表者名
      Julie BROCK (ed), Eric AVOCAT, Augustin BERQUE, Chantal CHEN-ANDRO, Guilhem FABRE, Kevin HENRY, ITO Gengo, IWANAGA Taiki, IWASHITA Takehiro, KOMAKI Satoshi, NISHIZAWA Kazumitsu, NODA Minori, TERADA Sumie, TERAI Tatsuya, TETSUNO Masahiro, TORIYAMA Teiji, YOKOTA Yuya
    • 総ページ数
      593 (343-366)
    • 出版者
      Peter Lang
    • ISBN
      9782875743817
  • [図書] 受容と創造における通態的連鎖 日仏翻訳学研究(執筆論文「ヴァレリーと翻訳――詩をいかに訳すか、翻訳するとはいかなる行為か」;翻訳「エリック・アヴォカ、総括:すべては翻訳に始まり翻訳に終わる――文学創造の方途」)2021

    • 著者名/発表者名
      ジュリー・ブロック編、エリック・アヴォカ、伊藤玄吾、岩下武彦、岩永大気、金子美都子、駒木聡、鉄野昌弘、寺井龍哉、寺田澄江、鳥山定嗣、西澤一光、野田農、オギュスタン・ベルク、横田悠矢
    • 総ページ数
      459 (275-300, 337-346)
    • 出版者
      新典社
    • ISBN
      9784787955166

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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