研究課題/領域番号 |
21K12962
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鳥山 定嗣 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80783117)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フランス詩 / 自由詩 / 韻律 / 象徴主義 / ヴァレリー / マラルメ / レニエ / ヴィエレ=グリファン |
研究実績の概要 |
令和5年度は、ヴァレリー、レニエ、ヴィエレ=グリファンについて、それぞれ以下のような研究を行なった。 ヴァレリーについては、英語論文(Expectation and Surprise in Valery’s Poetry)において予期と驚きという観点からヴァレリーの詩と詩論を検討するとともに、研究発表「マラルメの声を刻むヴァレリー」においてヴァレリーの自由詩「声についての讃歌」を取り上げ、声vs言語、人vs作品という観点からヴァレリーのマラルメ受容がいかにアンビヴァレントであるかを示した。また、ヴァレリーの詩文集『メランジュ』を翻訳し、作品の解題として、定型詩・自由詩・散文詩が混在する本書の特徴およびこうした混淆集の起源と変遷に関する論考を付した(来年度に刊行予定)。 レニエについては、7冊の自由詩詩集の形式的分析を精密化する一方、レニエの詩風の変化を探るうえで重要な短詩型「小オード」に関する研究を進めた。なお、レニエが自由詩を最も盛んに試みた象徴派時代の詩集『古のロマネスクな詩』と『さながら夢の中』に関しては、森本淳生氏代表の基盤研究(B)「「現代の起点」としてのフランス象徴主義の総合的研究」における研究分担として翻訳・註解を行なった。 ヴィエレ=グリファンについては、初期の自由詩詩集5冊と晩年の自選詩集を対象として韻律・脚韻分析を体系的に行ない、研究の基礎となる作業を終えた。今後、このデータを基にヴィエレ=グリファンの詩風の変化を明確にするとともに、同時期のレニエの詩集と比較することによって両者の自由詩の相違を明らかにし、その成果を論文にまとめる予定。 加えて、月刊誌『ふらんす』に「四季折々のフランス詩」と題する小文を一年間にわたって寄稿した。計12回の連載では、一般読者向けに、定型詩から自由詩へと推移するフランス近現代詩の流れにそって、毎回異なる詩人の作品を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究実績の概要に記したとおり、ヴァレリーに関する英語論文1点と研究発表1点に加え、ヴァレリーの詩文集『メランジュ』を翻訳し、解題の論考を執筆した(現在校正中であり、来年度中に刊行予定)。他方、当初予期していなかったフランス近現代詩に関する連載を1年間にわたり計12回行なうことになったため、レニエとヴィエレ=グリファンについては研究成果を公表するに至らなかったが、両詩人の作品の基礎的分析は終えており、それを基に論文をまとめる準備は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたる令和6年度は、ヴァレリー、レニエ、ヴィエレ=グリファンを中心とした19世紀末フランスの自由詩に関する研究をまとめるために、ヴァレリーの自由詩を含む詩文集『メランジュ』を刊行する一方、特にヴィエレ=グリファンとレニエに重点を置いて研究を行なう。両詩人の作品を対象としてこれまでに集積した基礎データを基に、さまざまな角度から両者の自由詩および作風の変遷を比較することで、19世紀末フランスにおける自由詩の多様性の一端を明らかにしようと試みる。
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