研究課題/領域番号 |
21K12964
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
児玉 麻美 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10757628)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ドイツ文学 / クリスティアン・ディートリヒ・グラッベ / 三月前期 / 悲喜劇 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、18世紀後半から文学作品の題材として好まれるようになった北方的・ゲルマン的な自然描写が、政治的・思想的な利用の対象へと転じていった時期がいつ頃であるのか、またその手法はどのようなものであったかを明らかにすることである。〈ドイツ的な〉自然描写が観客・読者といった受容者に対して、実際にどの程度の影響やインパクトを与え得たかという問題を詳細に検討するため、本研究においては劇作家クリスティアン・ディートリヒ・グラッベ(1801-1836年)および同時代の作家たちのテクストの比較およびモチーフ分析を行っている。 研究計画の初年度は、グラッベの遺作『ヘルマンの戦い』における自然描写が、彼の中期作品(ホーエンシュタウフェン朝連作やナポレオン劇)におけるような〈ドイツ性賛美〉とは異なる効果をあげていること、そうした傾向が劇作家自身の内的分裂を反映させる形で、テクストに独特な〈悲喜劇性〉の特徴を与えていることを明らかにし、論文「グラッベ『ヘルマンの戦い』における英雄性の解体について」(「言語と文化」第21号、2022年3月1日、1-19頁)および口頭発表「グラッベ『ヘルマンの戦い』の悲喜劇性について 」(オイフォーリオンの会 第90回例会、2022年3月21日)の形で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全世界的な物流の乱れにより、欧州の書店で購入した書籍類の納入に大幅な遅れが生じており、研究のため用いる文献が手元に届きづらい状態になっている。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果により〈悲喜劇〉というジャンルとグラッベとの関わりが非常に深いものであることが確認できたが、ドイツ文学研究においては〈悲喜劇〉が軽視される傾向にあることがFrank Zipfel(2017)によって問題として指摘されている。グラッベの後期作品にみられる明確な悲喜劇への志向は、三月前期という時代の特徴を示す術語としてしばしば用いられる〈分裂性Zerrissenheit〉とも無関係ではないと考えられるが、Walter Goedden(2021)による研究は書簡を対象としてグラッベ自身の内的分裂を検証するにとどまっている。 こうした先行研究の進行状況や未解決の問題などへ目配りをした上で、次年度以降は〈ドイツ的なもの〉や歴史的題材への関心の高まりと冷静に距離をとろうとするグラッベが、〈歴史劇〉および〈悲劇〉という枠組み自体の再検討へと向かった過程を明らかにすることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物流の乱れによる調達困難(航空便の大幅な遅延など)により、研究計画に必要なタイミングで書籍を購入できなかったため。
|