研究課題
若手研究
愛国的作家として受容されてきたC. D. グラッベの劇作品における〈ドイツ的風景〉に注目し、時代ごとの変化を探った。彼の遺作『ヘルマンの戦い』の中では〈ドイツ性〉という概念の虚構性が暴露されているが、自然表象を用いた祖国愛の喚起に対する懐疑は、晩年の〈悲喜劇的なもの〉への関心とも緊密に結びついていることを明らかにした。
ドイツ文学
〈若きドイツ〉〈ロマン派〉〈ビーダーマイアー〉といった多様な潮流が同時並行的に生じていた三月前期のドイツ語圏文学は、その全貌が非常に捉えがたく、また各事象と時代背景との関わりについて見通すことが困難であった。当研究は劇作家グラッベの全生涯にわたるテクストに分析を加え、ナチス政権期の受容やロマン派詩学との類似・相違などを明らかにすることにより、他の19世紀文献文化学研究において触れられることの少なかった部分に光を当て、さらなる議論のための補助線や手がかりを提供するものである。