研究課題/領域番号 |
21K12984
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐藤 亮輔 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 助教 (60859685)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ラベル決定アルゴリズム / 前置詞 / 束縛 |
研究実績の概要 |
本研究では、ある句のラベル(従来の生成文法の範疇、伝統文法の品詞)を決定するメカニズムを追究している。その一環として、(i)前置詞句が文頭に生起した場合の文のラベル決定方法と、(ii)文主語文のラベルと名詞表現(照応形、代名詞形、束縛代名詞、R表現・固有名詞)の解釈の関係性について研究を行った。当初は範疇素性の共有によってさまざまな言語現象の解明を試みていたが、研究の進展に従い、上記2つの構文については、別のアプローチが必要となることがわかった。 (i)については、素性継承の有無によってラベルが変わることが、この構文の特性(A移動とAバー移動両方の性質を示すことなど)の説明に繋がることが明らかとなっている。これまでに研究発表を行い、フィードバックを頂いた。このフィードバックに基づき、今後はさらに細部の分析を精緻化し、論文として公表していく予定である。 (ii)については、ラベル決定について、各段階ごとに局所的にラベルを決定していくのか、文全体の派生が完了してから大域的にラベルを決定するのかによって、名詞表現の解釈が変わることが明らかとなった。途中経過を論文として公表したが、こちらについても、今後さらに細部の分析を精緻化し、より研究を発展させていく予定である。この研究には、名詞の解釈規則とC統御の関係という、より一般的な問題も関わってくるが、こちらについてもより詳細に研究を進めていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ラベル決定アルゴリズムの探究を行っている。これまでのラベル決定アルゴリズムに加え、本研究では範疇素性共有によるラベル決定の方法を追究していたが、(i)文頭に前置詞句が生起する文と(ii)文主語を持つ文に見られる諸現象ついては、範疇素性共有では説明できないことが明らかとなった。 そこで、代替案を追究した結果、(i)については素性継承の有無によってラベルが変わる新たなアルゴリズムを提案し、研究発表を行った。この提案により、この構文の特性(A移動とAバー移動両方の性質を示すことなど)が正しく説明されることとなった。 (ii)については、局所的にラベルを決定するのか、大域的にラベルを決定するのかという、ラベル決定のタイミング次第で名詞表現(照応形、代名詞形、束縛代名詞、R表現・固有名詞)の解釈の違いが変わることが明らかとなった。 上記の現象は、当初の範疇素性共有を用いたラベル決定アルゴリズムだけでは説明できない現象であることがわかり、別のアプローチが必要となったが、いずれもラベル決定アルゴリズムの精緻化に繋がるものであるため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(i)文頭に前置詞句が生起する文と(ii)文主語を持つ文についての分析をより精緻化し、論文として公表していく予定である。(i)については、すでに研究発表で頂いたフィードバックがあるため、そのフィードバックを活かして論文作成に当たりたい。(ii)については、すでに途中経過を論文として公表しているが、査読者からご指摘頂いた点を改善していきたい。 また、当初の範疇素性共有の必要性の追究も行っていきたい。そのため、引き続き複合語の研究も行い、口頭発表および論文発表へと繋げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今猛威を振るっているコロナ禍により、学会等への出張が激減しており、当初予定していた経費を使用できなかった。 次年度には、コロナ禍が落ち着いているタイミングを見計らって学会に参加していく予定である。また、資料収集にも経費を活用していきたい。
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