最終年度である2023年度には、Chomskyの最先端の枠組みを複合語研究に活かす方法を探るため、北海道理論言語学研究会第16回大会でChomsky (to appear)のレビューを行った。実際に、具体的に研究に活用するにはさらに検討していく必要があるが、最先端の理論のメリットとデメリットを明確化することができた。 また、2023年度の研究成果は「日本語の複合動詞と問い返し疑問文」(東海英語研究 第6巻)として公表した。これまで、複合動詞の研究は記述に重点が置かれていたように思われるが、本稿では語彙的複合動詞が等位構造を持つと提案することで、Transitivity Harmoney Principleに説明を与えた。また、複合動詞を用いた問い返し疑問文についての新たな事実を明らかにした。 研究期間全体を通しては、日本英文学会関西支部第16回大会で「前置詞倒置構文とラベル決定アルゴリズム」という題目で発表を行い、複合語とは直接は関係しない前置詞の分析を通して「名詞性」について考察した。複合動詞については、日本英文学会東北支部第77回大会では「ラベル付けアルゴリズムと日本語のVV複合語」という題目で発表を行い、日本語の複合動詞におけるTransitivity Harmoney Principleと問い返し疑問文について説明を与えた。この内容は、上記「日本語の複合動詞と問い返し疑問文」としてまとめられている。複合名詞についての研究成果は、「日本語の名詞語彙的複合語について」(Fortuna 第34巻)として公表済みである。
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