研究課題/領域番号 |
21K12991
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
平山 裕人 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (10878292)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 推量表現 / 証拠性表現 / 法助動詞 / 形式意味論 / モダリティ / エビデンシャリティ |
研究実績の概要 |
本研究は認識法助動詞と証拠性表現の2つのカテゴリーを(1)時間的制約と(2)推量の形式の二つの観点から横断的に分析し、その意味の現れ方に一定の法則性を見出すことを目的としている。本年度は特に(2)の推量の形式に関して、「証拠性表現を用いた推量においては、認識法助動詞を用いるときとは異なり、仮定的な情報に基づくことはできない」という新たな一般化を得ることが出来た。具体的には、qという情報に基づいてpという命題を推論する際に、推量法助動詞を使用する際にはqが仮定的なものであってもよいが、証拠性表現の場合はそれが許されない。これは本研究の主な研究対象である「ようだ」、apparently、should、mustのみならず、「みたいだ」「らしい」「にちがいない」といったほかの推量表現にも当てはまる一般化であり、証拠性表現と推量表現との間の大きな意味的差異であると言える。 また、個人的嗜好述語(Predicates of Personal Taste)と認識法助動詞/証拠性表現との相互作用について、英語と日本語で違いがあるという発見もできた。個人的嗜好述語の研究は主に英語のtastyなどが主流であり、言語間の差異はこれまで大きく取り上げられることはなかったという現在の状況において、本研究におけるこの発見は今後の通言語的な議論に繋がっていく土台を提供しうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄で記したように、特に推量の形式の点で本研究はおおむね順調に発展していると言える。「仮定的な情報に基づいた推論を行う際に使用できるかどうか」という点は証拠性表現と推量表現との間の大きな意味的差異であると言える。この意味的差異の観点から、個人的嗜好述語(Predicates of Personal Taste)が、その経験者が明示的に話者であると指定されている際に推量法助動詞とは共起できるが証拠性表現とは共起できないという現象に説明を与えることができた。その研究成果はJapanese Korean Linguistics 30にて発表されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的は「証拠性表現と認識法助動詞の2つのカテゴリに関して、横断的に成り立つ普遍性を発見、形式化する」というものである。今年度の研究で「仮定的な情報に基づいた推論の際に使用可能であるかどうかが証拠性表現と認識法助動詞の間で異なる」という一般化を発見することはできたが、それがこれら2つのカテゴリにおける横断的普遍性とどのように繋がるのかが依然不明瞭である。また、本研究の準備段階の時点で報告者が想定していた「推量表現が推量の形態に制約をもつ場合、その制約は、証拠となる命題とprejacentの間の反事実文的関係で規定される」という一般化と本年度で得られた一般化がどのように関係するかも今後検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の前半は国際学会への出席も予定していたが、コロナ禍でオンライン開催ということにもなり予定通りの予算執行ができなかった。 次年度から国際学会は現地開催になるので、そちらの旅費に充てたいと考えている。
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