研究課題/領域番号 |
21K12995
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
文 昶允 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60845030)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 短縮現象 / 重音節 / 特殊モーラ / 促音 / 長音 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本語における短縮語の形成過程において、重音節が連続する出力形は避けられるかどうかについて検証した。短縮語形成とは、基の語の一部を削除して新たな語を作る語形成である。各構成要素の一部を切り取るタイプの複合語短縮の韻律構造に焦点を当てることで、出力形の音韻的特徴が短縮語の形成に与える影響について考察した。 まず、複合語短縮のデータベース(文2021、全1101語)の実例分析を通して、連続した重音節を有する出力形(H#H)は、LL#LL、H#LL、LL#Hを含む形式より比較的少ないことが確認された(Hは重音節、Lは軽音節)。しかし、重音節が連続する短縮語が少ない理由として、重音節の連続が構造的に嫌われているからではなく、単に重音節から始まる前部要素と後部要素の複合語自体が少ないからという理由が考えられる。このような実態を踏まえ、前部要素(N1)が(仮想の意味を添えた)無意味語と、後部要素(N2)が実在語で構成された仮想短縮語実験を行った。その結果、複合語短縮は標準型として短縮されることが多いということがわかった。また、短縮語形において重音節が連続する構造は、一様に回避されるとは限らないことが明らかになった。特に、複合語を構成する前部要素の第1音節に促音(Q)または長音(R)を含む語においては、そこに撥音(N)や二重母音(J)を含む語に比べて、標準型より変則型が選ばれやすく、それは促音と長音が持つ特殊モーラとしての特徴に起因すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、日本語を対象としたこれまでの研究成果に基づいて、短縮現象に影響する音韻的要因を探るものである。研究計画を立てた当時は、音韻的要因のうち「音象徴」が短縮語に与える影響について探究する予定であった。今年度は音韻的要因のうち「音節構造」に注目しており、音象徴については次年度考察を深めていく予定である。 以上のことから、現在まで本研究の進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は日本語の短縮語形成を対象として、音象徴の観察範囲を「大きい」「小さい」「強い」「弱い」に広げる。加えて,高年層を対象とした調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、音象徴が短縮語に与える影響について論文をまとめ投稿する予定であったが、取り下げをした経緯がある。投稿・掲載費用として計画していた予算は、次年度の投稿費用または海外学会への参加費用として使用する予定である。
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