研究課題/領域番号 |
21K13003
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
中谷 博美 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20813421)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 文末表現 / 認知類型論 / 主観性 |
研究実績の概要 |
本研究は、中韓語の文末表現が持つ英日語の両形式との重なりと主観性の揺れに着目し、次の中韓語の文末形式を意味機能と類型的位置づけを示すことを目的としている。中韓語との比較対象を行うことにより、日英語を中心とする主観性による類型の詳述化を試みるものである。 研究初年度である本年度は、映画から抜粋した英語の付加疑問文について、その日本語、中国語、韓国語訳の吹き替え版を入手し、中韓語の母語話者の協力を得て整理してパラレルコーパスを作成した。 整理したデータから中国語に着目し、分析と考察を進めた結果、次のような分類ができることを示した。①日本語型(語気詞付加形式)、②英語型(疑問形式付加)、③折衷型(疑問形式+語気詞付加)の3形式である。意味機能的な特徴として、①は話し手(あるいは主語)の推測等の気持ちを表している、②は聞き手に対して要求している、③は話し手と聞き手の共有認識を表していることがわかってきた。また、文末形式の他に主観性と関わって日英語との比較で明らかになったのは、場所が関わる文は日本語に、その場にいる話し手・聞き手が関わる文は英語に近い文型を用いる傾向がある点である。 研究成果として、先に示した3形式の意味機能的特徴をまとめ、研究発表を行った。これらの形式が「聞き手志向」によって使い分けがなされていると結論付けた。中国語の主観性に揺れが生じる理由の1つにこの「聞き手志向」が関連していると考えられる。 また、このことを英語教育に応用し、日本語母語話者がスピーキング能力を向上するための段階的なトレーニング方法に関する研究発表を行い、論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2021年度に日英中韓語の4言語、特に中国語と韓国語について日英語との比較対照分析を初年度に進めることとしていたが、韓国語の分析については計画よりも遅れている。コロナ禍における国外での調査の難しさから、オンラインでのやり取りを中心としたデータ収集になったことにより、想定よりも分析を進めることができなかった。中国語の分析については、データ収集とその分析に加えて、英語教育への応用に発展させることができたが、全体としてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、収集したデータをもとに中韓語を中心とした4言語の比較対象分析を進める。計画よりもやや遅れている状況にあるため、2022年度は、韓国語の分析について重点的に分析と考察を重ね、研究を軌道に乗せるように修正していきたい。具体的には、韓国語の文末表現について形式を分類し、意味機能的特徴について日英語との異同の観点からまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に計画していた協力者との打ち合わせや研究会、研究発表が中止またはオンライン等となり、旅費が殆ど使えなかったことから次年度使用額が生じた。オンラインでの調査については計画の一部としていたものの、予測できないこともあるため、今後はさらに柔軟に対応するようにしたい。
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