現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初に提出した計画は2021年に格助詞「ニ」の過剰使用,2022年に格助詞「ニ」の脱落について一年ずつ研究するということであったが,実際にデータを見てみると,過剰使用より脱落の誤用が明らかに多くてその誤用も複雑であることが分かった。そこで,2022年にも「ニ」の脱落は2021にご報告したように研究を続けてやっていると同時に,「ニ」の過剰使用も本格的に研究を進めている。しかし,2021年に予定となった中国語との対照はまだ着手できていない状態である。 「ニ」の脱落については,その誤用実態を明らかにしたうえで脱落が特に多く見られた時間名詞「とき」に焦点を当てて検討した。誤用コーパスから「PときQ」の後の「ニ」の脱落の誤用例を集めて誤用パターンを確認し,また現代日本語コーパスの中から「PときにQ」と「PときQ」の用例のデータを収集し,「ニ」の付加がどのようなときに起こっているかを先行研究の主張を基に確認し,「ニ」の付加条件を提示してみた。2022年5月に『「PときにQ」と「PときQ」ー「ニ」の付加の有無をめぐってー』を題目にし, 日中対照言語学会第46回大会(2022年度春季大会)で口頭発表をした。一方,「ニ」の過剰使用についても,誤用コーパスから誤用例を集めて過剰に使用した「ニ」について分類しパターン化を試みてみた。さらに過剰使用が多く観察された「時間名詞」の後の「ニ」の過剰使用について詳しく検討してみた。2023年2月に「中国語を母語とする日本語学習者における格助詞「ニ」の過剰使用について―時間名詞に後接する「ニ」の過剰使用を中心に―」を題目にし,東アジア言語文化学会第4回大会で口頭発表をした。
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今後の研究の推進方策 |
当初に提出した計画は2021年に格助詞「ニ」の過剰使用,2022年に格助詞「ニ」の脱落,2023年と2024年に「ニ」とほかの助詞との誤用について一年ずつ研究するということであった。つまり2023年に「ニ」とほかの助詞との誤用に着手するというスケジュールであった。しかし実際にデータを整理し,先行研究を調べてみれば「ニ」の脱落と過剰使用はその誤用実態を調べることに止まっていることではなく,誤用が目立っている用例について掘り下げる必要があるように思われる。そこで,2023年に「ニ」の脱落と過剰使用が多く観察された用例に注目し,2022年に口頭発表した研究内容,つまり『「PときにQ」と「PときQ」ー「ニ」の付加の有無をめぐってー』と「中国語を母語とする日本語学習者における格助詞「ニ」の過剰使用について―時間名詞に後接する「ニ」の過剰使用を中心に―」は論文にまとめてみたいと考えている。ほかに,時間を表す名詞以外の形式名詞の後の「ニ」,受け身構文や変化構文などの構文に出現する「ニ」および動詞文と名詞・形容詞述語文に観察される「ニ」の脱落と過剰使用についても整理し,考察してみたいと考えている。2023年に「ニ」の脱落と過剰使用の部分についてメインな内容を完成するように目指したい。一方,中国語との対照は,2021年に分離・分割を表す動詞が述語となる文において「ニ」と中国語の結果補語との対照について口頭発表をしてみたが,2022年に中国語との対照研究はまったく取り入れておらず,2023年に対照研究は本格的に始めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスが収まっているものの,参加した研究会や勉強会はまだオンラインで実施されたことがほとんどであったため,当初の計画で予定していた出張や学会に行くことができず,次年度使用が生じることになった。これを利用して2023年度は経費を以下の面で使用する予定である。 ①研究のために,特に日本語学,中国語学、日中対照などの言語類に関係する書籍と図書を購入する予定がある。②コロナで中止した社会活動が回復されている今,研究会は会場で開催する場合,なるべく現場に行って研究会に参加する予定である。それに伴い,出張費を計上する。③データを分析する際に,ほかの研究者の意見を聞くために移動の費用と謝礼が生じる。④発表のレジュメや投稿論文について,校閲とネイティブチェックが必要になるので,アルバイト代を支出する項目として考えられる。⑤必要に応じてアンケートを作成し実施する場合の謝礼。⑥研究するためのその他の消耗品。
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