研究課題/領域番号 |
21K13014
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
杉山 俊一郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (10868970)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 古代語 / 格 / 格助詞 / 意味 / コーパス / 文章・文体 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、国立国語研究所(鴻野知暁ほか)編(2017)『日本語歴史コーパス 奈良時代編Ⅰ万葉集』(短単位データ 1.0 / 長単位データ 1.0、中納言バージョン 2.3)https://clrd.ninjal.ac.jp/chj/nara.html#manyo)を用いて格助詞を抽出し、前後文脈を参照して、格助詞が受ける語、係る語の分析を進めた。 本年度は、「に」に加え「より」について同様の作業を行ったが、「より」については調査範囲を広げて『宣命』も作業対象とし、『万葉集』134例、『宣命』44例の計178例について分析を行った。用例収集においては、国立国語研究所(呉寧真ほか)編(2020)『日本語歴史コーパス 奈良時代編Ⅱ宣命』(短単位データ 1.0 / 長単位データ 1.0,中納言バージョン 2.5.0)https://clrd.ninjal.ac.jp/chj/nara.html#senmyo)を活用した。また「より」については、小柳智一(2011)「古代の助詞ヨリ類―場所格の格助詞と第1種副助詞―」『日本語文法の歴史と変化』くろしお出版などの代表的な先行研究を参照し、①本データベースにおける意味の組み合わせパターンと、先行研究における意味分類とがどのように対応するか、②格の意味分類において、語の意味的な組み合わせパターンだけではどのような点が不足するかを確かめる作業を進めた。この他、以下の論文を公表できた。 杉山俊一郎(2023)「「言語文化」の授業における古典文法の役割について」『信州大学教育学部研究論集』 17 古典文法教育に関するものではあるが、前年度現代語格助詞の整理で得た知見をもとに、古典語についても同様の視点で用例を観察したもので、文法形式の意味・用法と文章・文体との対応が改めて確認できた。格の意味・用法の分析でも文体の視点は重要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
公私とも余裕がなかった点、年度後半は体調を崩していたため、作業内容に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
意味の組み合わせパターンについてはある程度の目途がついているので、先行研究の意味分析との対照作業を中心に作業を進める予定である。また、特定資料に見られる使用実態が、時代差なのか文体差なのか、あるいはそれ以外の要因があるかなどの検討も始められるよう、調査対象範囲を拡大して準備を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) 研究の遂行に必要な物品が当初計画よりも安価に購入できたこと、前年度に引き続き学会がオンライン開催であったことから旅費の支出がなかったことによる。 (使用計画) 参加を予定している学会の開催形態がオンラインから現地開催へと戻りつつあるので、旅費の支出が見込まれる。また、データ量が増えてきたので、確認作業に相当の時間をとる必要があり、そのための物品費、人件費の発生が見込まれる。正確なデータ蓄積と適切な研究費執行の両方に気を配りながら作業回数や時間などの調整に努めたい。
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