研究実績の概要 |
本年度の研究では、初期英語におけるthatが先頭にある自由関係節(以下、that自由関係節と呼ぶ)に関する歴史的事実に対して、ラベル付け理論を用いた分析を試みた。 本研究では、コーパス調査により抽出された例に基づき、先行研究(cf. Castillo (1994))で挙げられている、特殊な種類のthat自由関係節が見られる時期の特定を試みた。本研究の理論的分析では、古英語に見られるパターン(e.g. Allen (1980, 2020))や中英語以降における特殊な例に注目し、代名詞や指示詞などの内部構造に関する先行研究(e.g. Kayne and Pollock (2010))や、関係節の構造的変化に関する先行研究(cf. 縄田 (2021, 2022))などの考えに基づいた分析を検討した。この分析では、that(指示詞)の内部構造に注目しながら、that自由関係節の構造・派生を考案し、その歴史的変化について考察している。 この研究成果は、日本英文学会第95回大会シンポジア「極小主義理論と言語変化」において、「ラベル付け理論と自由関係節の変化」というタイトルで口頭発表された。この研究では、当該の自由関係節と関連する、ほかの現象・構文についても言及している。 また、以上で概観した理論的分析の方向性や妥当性を検証するため、関係詞の内部構造に注目しながら、英語におけるある種類の自由関係節に対する分析の検討も始めることができた。
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